「ケガや空腹に気づかない」感覚鈍麻という"痛み" 知られざる「痛みを感じない子たち」の苦しみ

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じつは、「感覚鈍麻」は「感覚過敏」と同時に併発するケースが多く、先述した感覚過敏研究所によるアンケートでは、90%以上の人が併発していると回答している。

・「痛覚は鈍麻だけど触覚過敏で、ある種の服、シャワーなどは痛い」(28歳・女)
・「骨折しようが痛みはわからないのに、人に身体を触られるとその感覚が何時間も残る」(18歳・女)
・「そのときの体調や目的、誰と一緒かなどの環境により、まったくダメなときと大丈夫なときがあります」(7歳・女児 ※親による回答)

こうした回答を見ていると、ひと口に「感覚過敏」「感覚鈍麻」といってもその症状はじつに多様であり、また、環境や感情、体調等によって同じ人でも感じ方はその都度変わるのだということがわかるだろう。

どんな感覚も、その人の「個性」である

黒川氏は、次のようにメッセージを贈る。

カビンくんとドンマちゃん - 感覚過敏と感覚鈍麻の感じ方 -
『カビンくんとドンマちゃん 感覚過敏と感覚鈍麻の感じ方』(ワニブックス)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

「本来、感覚は1人ひとり違い、どんな感覚もその人の個性です。私たちは『感覚のとらえ方には幅がある』ということを意識し、特性のある人の声を聞いて、どんなことに困っているかを知ったり、どんな配慮があれば問題なく過ごせるかに想像をめぐらせたりする必要があるでしょう」

そう、感覚に特性があることは、それが過敏であれ鈍麻であれ、決してネガティブなことではないのだ。とくに「感覚鈍麻」といった、いまだ正しい知識の行き届かない特性に関しても、(現時点は)ただの少数派であるにすぎない。

私たちは、特性のあるなしにかかわらず、どんな人でも平等に暮らしていく権利がある。それが“当然”に配慮される社会になることを、願ってやまない。

加藤 路瑛 「感覚過敏研究所」所長

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かとうじえい / Jiei Kato

2006年生まれ。17歳。株式会社クリスタルロード代表取締役社長。感覚過敏研究所所長。聴覚・嗅覚・味覚・触覚の感覚過敏があり、小学生時代は給食で食べられるものがなく、中学生になると教室の騒がしさに悩まされ中学2年生から不登校。その後、通信制高校へ進学。子どもが挑戦しやすい社会を目指して12歳で親子起業。子どもの起業支援事業を経て13歳で「感覚過敏研究所」を設立。感覚過敏の啓発、対策商品の企画・生産・販売、感覚過敏の研究に力を注ぐ。

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黒川 駿哉 精神科医

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くろかわ しゅんや / Shunya Kurokawa

1987年生まれ、山形大学医学部医学科卒、慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程修了。慶應義塾大学病院、駒木野病院、九州大学病院、島田療育センターなどでの勤務を経て、現在は不知火クリニックにて児童~成人の発達障害の専門外来をおこなっている。英国にてADOS2(自閉症スペクトラム観察検査) 、ADI-R(自閉症診断面接)の研究用資格を取得し、児童・発達障害領域の腸内細菌、遠隔診療など多数の国内外の研究に携わっている。子どもの主体性を引き出す様々な団体の活動支援に力を注いでいる。医学博士、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本医師会認定産業医。

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国実 マヤコ 書籍編集者、文筆家

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くにざね まやこ / Mayako Kunizane

1977年東京生まれ。青山学院大学文学部史学科を卒業後、出版社勤務を経てフリーランスに。書籍の編集、および執筆を手がける。著書に『明日も、アスペルガーで生きていく。』(ワニブックス)がある。NHK「あさイチ」女性の発達障害特集出演。公開講座「大人の生きづらさを知るセミナー」京都市男女共同参画センター主催@ウイングス京都にて、講演会実施。著者HPはこちら

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