部活動などが原因「教師の過労死」の責任は誰に、富山地裁8300万円賠償命令 滑川市・中学校教員の裁判から学ぶべきこと

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ところが、教職員が過労死などにより亡くなったり、重大な障害を負う事態になったりしても、裁判で争われた場合など一部の例外を除いて、背景や要因が調査されることはほとんどないし、検証されることもない。

教育委員会から関係者へ多少の聞き取りなどは入るだろうが、調査報告書が出されることは非常にまれだ。Aさんの妻と同じく、中学校教員の過労死の遺族である工藤祥子さんと一緒に私が100件近い過労死等事案を調査した限り、検証報告書が出ていたのは、郡上特別支援学校において講師が自死した事案、1件のみである

そして、責任の所在はあいまいなまま、「お気の毒さまでした」「生徒思いの熱心な先生だったのに」といったことで、幕引きとなる場合がほとんどだ。管見の限り、文科省も積極的に調査や指導に動いたことはない。そもそも過労死等の件数すら、誰も把握できていない。

文科省はしきりに、教育行政には「PDCAサイクルが必要」「エビデンスが重要」などと述べているが、過去に起きたこと、事実から学ぶという姿勢が、校長にも、教育委員会にも、文科省にも決定的に欠けている。

本件でいえば、滑川市と富山県は、この事案の反省点と教訓は何なのか、再発防止のために何が必要なのかという報告書を出して、全国の自治体と文科省に配ることが、誠実な態度なのではないか。

本件のような事実に向き合うのは、つらく、しんどい部分はある。だが、戦後の日本の教育が戦争の反省からスタートしたように、私たちはもっと学び、今ある危機に対処していくことができるはずだ。

※妹尾昌俊・工藤祥子『先生を、死なせない。教師の過労死を繰り返さないために、今、できること』(教育開発研究所)

(注記のない写真: iStock / Getty Images Plus)

執筆:教育研究家 妹尾昌俊東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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