宅建資格の格上げは「仏作って魂入れず」だ! 新たな"士業"は不動産業界に何をもたらすか
では、今回の法改正によって何が変わったのか。主な変更点は次の5つ。
いずれも「取引の安全」が念頭に
まず「宅地建物取引士の業務処理の原則」については、短期的な利益追求を目的としたオーバートークに走らず、的確な説明がなされるよう、消費者利益の最大化に努めることを明確化した。
不動産取引を適正に行うためには、取引の当事者が取引の対象となる住宅についての情報はもとより、法律や税務など広範な知識が必要となる。しかし現実には、知識においても経験においても一般の消費者は専門業者にかなわず、情報構造の非対称性がトラブルの温床となっている。
2番目の「信用失墜行為の禁止」は、職業倫理に反し、職責の遂行に著しく悪影響を及ぼすような行為を禁止したもの。裏読みすれば、それだけ信用失墜行為が多発していることを自他ともに認めているわけだ。
3番目の「知識および能力の維持向上」は、知識を常にブラッシュアップし、専門家として要求される能力をいつでも発揮できる勤勉さを欠かさないよう、定められた。
4番目は、宅建士の資格を有しない従業者に対して、必要な指導・助言を行い、各種研修に参加させるなど必要な教育を実施するよう、定められた。本来、教育係となるのは直属の上司や先輩だが、宅地建物取引士にも役割を分担させ、一般従業者との連携を通じてレベルの底上げを図る狙いがある。
最後は読んで字の如く、反社会勢力を排除する機運が高まる中、当然の成り行きといえるだろう。上述した5項目はいずれも「取引の安全」を念頭に置いたものだ。ただし、それを担保するはずの5年に1度の法定講習の内容は、疑問符がつくものだった。
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