五輪に不安「フランス暴動」発生1週間も止まぬ深層 警察官によるアルジェリア系少年の射殺がきっかけ

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さらにマクロン氏は暴動について、暴力的破壊行為を行った未成年者の親にも罰則を科すべきだと発言し、貧困地区のパリ西郊外トラップのアラブ系市長が、「貧困者をさらに生活困難に追い込めば、さらにひどい暴動が起きる」と非難した。

これについては、野党・中道右派・共和党のシオッティ党首も「マクロン氏の暴力に走る未成年の親たちを罰する案を支持する」と言っている。実は昨年春の大統領選挙で表面化したのはフランスの右旋回だった。左派は劣勢に回り、6月の国民議会選挙でも右派、中道右派、中道各政党は計398議席を獲得し、左派連合の131議席を大きく上回った。

この数年、右旋回するフランスの警察権力は強化されており、非行に走る若者への取り締まりも厳しさを増している。今回も警察に従わないアルジェリア系の未成年の若者に厳しい態度を取り、いきすぎた取り締まりを生んだとみられている。

サイバー攻撃で治安判事の個人情報が流出

一方、フランスの公共ラジオ「フランス・アンフォ」が7月3日に報じたことによると、サイバー犯罪組織「クロムセキュリティ」は、少年の死を受けて1000以上の治安判事の個人情報を公開した。これを受け、仏法務省はパリ検察に同組織を告訴した。公開されたのは名前、個人の住所、携帯電話番号、銀行IDなどで、同組織は3日朝、フランスの判事1121人の個人情報を含むファイルを公開した。

例えば、「アミアンの治安判事」として紹介されている平等担当大臣代理、イザベル・ローマ氏の個人情報といった具合で、パリの裁判所の現職判事数人や別の対テロ治安判事のものまであった。クロムセキュリティは、前日にSNSアプリ、テレグラムで公開されたメッセージの中で、オープンソースのコンテンツ管理システムの欠陥を悪用し、フランスの司法サイトをハッキングしてこれらの個人情報を入手したと説明した。

結果的に今回の少年殺害事件の公判を担当する判事などが危険にさらされる可能性は高まり、司法が機能しなくなる懸念も指摘されている。

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