五輪に不安「フランス暴動」発生1週間も止まぬ深層 警察官によるアルジェリア系少年の射殺がきっかけ
実は、発砲した警察官を支援する動きも注目されている。昨年のフランス大統領選に立候補して注目された移民排撃を主張する極右エリック・ゼムール候補の元報道官を務めたジャン・メシア氏は、警察官の家族を支援するためのフェイスブックで募金活動をネットで開始した。
フランスメディアは一斉に「募金を止めさせるためにフェイスブックのサイトを閉鎖すべきだ」と非難しているが、集まった金額は6月末から7月3日までで700万ユーロ(約1億5600万円)に上る。
募金者は5万人以上で、大半は医師、上級公務員、企業管理職だ。募金した女性の1人は「彼は刑務所に入るようなことは何もしていない。彼は自分の仕事をしただけだ」と述べた。
右派・国民連合(RN)に集まる支持
今回の警察官による移民系少年の射殺事件を受け、それぞれの政党の政治家の発言で、最も支持を得ているのが右派・国民連合(RN)だ。
Ifop(フランス世論研究所)によると、危機対応への満足度が最も高かったのが、昨年の大統領選で決選投票まで残ったRN前党首であるマリーヌ・ルペン氏の39%で、マクロン氏の33%を上回っている。中道右派の共和党のシオッティ氏は24%、極右のゼムール氏は22%、反権力で移民支持の左派のメランション氏は20%だった。
過去のRNなら暴徒化するアラブ系の若者を非難し、警察の公権力を擁護するはずだが、今回は異なっている。
例えば、移民系住民が7割を占めるパリ北郊外、セーヌ=サン=ドニ県で育ったRNのバルデラ党首は、「過去にも移民系若者が破壊行為を繰り返しており、彼らは理由を見つけては破壊行為を行う願望を持っている」と指摘し、少年犯罪者の親への家族手当支給停止や犯罪者の更生のための街の清掃活動を提案している。
一方で「暴力が日常化している地域や路上で麻薬を売るなどして暮らしている移民系の若者も、社会が生んだ暴力犯罪の現実的犠牲者でもあり、彼らに対して全面的かつ確実な支援が必要」と彼は訴えた。
今回の事件では、マクロン大統領も非難されている。理由の1つは17歳の少年が射殺された翌日夜、パリ東郊外ベルシーで行われたイギリスの歌手、エルトン・ジョンのコンサートに妻と行き、エルトン・ジョンと3人で記念写真を撮ったことだ。少年の悲劇と全国に広がる暴動の最中の行動としては非常識と非難された。
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