5月に発表された2022年度の経常収支は9.2兆円の黒字で、黒字額は前年度に比べて54%も減少した。筆者は、経常収支の姿が国民福祉に直接関係するわけではないので、こうした経常収支の変化は大した問題ではないと考えている。
しかし、「それは日本の国際的な稼ぐ力が衰えていることを示すものだ」という指摘もある。確かに経常収支の内訳を見ると、モノ・サービス貿易の収支差は赤字幅が拡大する一方、利子・配当などの第1次所得収支の黒字幅は拡大している。日本は貿易で稼ぐ力が衰え、もっぱら利子・配当で稼いでいるように見える。
しかし、ネットの収支差を稼ぐ力の指標として見ることには疑問がある。例えば、貿易・サービス収支が貿易により稼ぐ力の指標だとすると、輸入を減らしたり日本人が海外旅行に行かなくなったりすると稼ぐ力が増えるという、やや奇妙なことになる。
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