
(写真:metamorworks/PIXTA)
7月に発表された経済財政白書を眺めていた私は、1枚の図を前に考え込んでしまった。「労働時間当たり実質GDP(国内総生産)」(=時間当たり労働生産性)を国際比較した図で、日本はこの指標においてほかの主要国と比べて遜色ないというのである。
これを見て私には数々の疑問が生じた。「日本は生産性の伸びが低いから、もっと引き上げるべきだ」という常識的な議論は間違いで、成長戦略に注力する必要はないということなのか(第1の謎)。
次に悩んだのは、この見劣りしない時間当たり生産性の伸びをいかにして実現したのかということだ(第2の謎)。日本は多年にわたり長期的な成長に対する資本の寄与は他国より低い。そのため、時間当たり生産性の伸びは労働者の資本装備率の上昇によるものではなく、労働の分野の中だけで実現したものだと考えられる。
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