「物価上昇を上回る賃上げ」を求める岸田文雄首相に対する経済界の反応は予想以上に前向きだった。自社の賃上げ幅に言及する経営者も多く、安倍晋三政権下の「官製春闘」時代とは潮目が変わった印象を受けた。
これには、物価高の下での社員のモチベーション維持と、賃上げなしには優秀な社員を確保できないという経済界の危機感が反映しているのだろう。民間エコノミストへのアンケートによれば、今年の春闘賃上げ率は2.8%台が予想されており、1990年代の金融危機以来四半世紀ぶりの高さだ。
それでも、定期昇給部分を除くと実質的な賃金上昇は1%強だから、日銀が目指す2%物価目標には不十分である。また、大企業の賃上げだけでは、日本全体の賃金の底上げはできない。
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