東武東上線の上板橋、新「準急停車駅」の潜在力 「各停しかない区間」で躍進、駅前に再開発計画

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東武東上線は1914年5月1日、前身の東上鉄道が池袋から入間川右岸の田面沢まで開業させた。上板橋はそのひと月半後の6月17日に開設した。

いわゆる“未成線”や廃線に関連が深い駅でもある。大正期から伊勢崎線の西新井駅と同駅の間を結ぶ「西板線」の計画があったが、実現しなった。現在は、1931年に先行して開業した西新井―大師前間が大師線となって西新井大師への参拝客輸送を担う。

また、同駅からはかつて「啓志線(ケーシー線)」が延びていた。太平洋戦争中に現在の陸上自衛隊練馬駐屯地にあった旧陸軍第一造兵廠の倉庫まで敷設、戦後になって成増の飛行場跡にできた米軍の家族住宅「グラントハイツ」へ延伸された。啓志線は1959年に完全廃止。グラントハイツ返還後には「光が丘」が開発された。

南口に大規模な再開発計画

上板橋駅の北口は北区の王子駅と結ぶ路線バスの乗り場がある一方、南口は広場もなく道路も狭い。

竣工した当時の上板橋駅南口駅ビル=1976年(写真:東武博物館所蔵)

が、南口は今後大きく街の風景が変わろうとしている。川越街道につながる幅16m・長さ210mの道路を整備し、その東西で再開発を進める。このうち東地区には東・中・南の3街区があり、東街区に地上27階、中街区に19階建ての店舗・住宅が誕生する。

建築工事は2025年4月に着手、2028年12月に完成の予定。バス・タクシーが入れるロータリーや、駅直結のペデストリアンデッキ、地下駐輪場など公共施設も整備する計画だ。すでに南口では、シャッターを閉じ、営業終了を知らせる張り紙をした店舗が並ぶ。1976年に完成した「駅ビル」も再開発エリアに含まれる。

同じ板橋区内にある大山駅では連続立体交差事業や商店街周辺の大規模再開発のプロジェクトが予定される。東上線の都内の区間や沿線も変化を遂げようとしている。

上板橋の準急停車の背景には「もともと都内の駅に優等列車を停めてほしいという要望があった」(東武鉄道の広報担当者)という。周辺の再開発と直接関係はないが、駅前の大変貌に向けての序章と位置づけることはできそうだ。

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橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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