富士フイルム「チェキ」がスマホ連携で遂げた進化 写真を加工できる拡張現実(AR)機能まで搭載
伸びが著しいのは、2017年度から販売しているスクエアフィルムだ。2022年度までに販売数量は6倍になった。2023年度は年間で3割増を見込む。おしゃれ感を演出できる写真フォーマットとして市民権を得たといってよさそうだ。
若い女性が中心だった顧客層にも変化が出ている。最近では「男性層への販売の伸びが大きい」(富士フイルムイメージングソリューション事業部統括マネージャーの高井隆一郎氏)という。
男性層への人気の火付け役となったのが、2021年11月に発売したハイブリッドタイプの「INSTAX mini Evo」だ。その特徴はクラシカルなデザイン。「『かわいらしいカメラが中心のチェキって、今まで自分が持つものだと思っていなかった』という層に届いた」(高井氏)。
事業としても好調を維持
富士フイルムにとってチェキは、デジタルカメラに駆逐された祖業の写真フィルムが生き延びている数少ない事業だ。医療機器や電子材料、印刷機など産業向け製品が売上高の過半を占める中、一般向けの広告塔でもある。
富士フイルムは、チェキについて収益などの具体的な数字を公開していない。発売20周年にあたる2018年度に1002万台を売り上げたことを明かしたのみだ。しかし、決算説明会では継続して、チェキの好調に触れている。
チェキ関連がその大部分を占める「コンシューマーイメージングセグメント」の2022年度の売上高は2669億円。前年度比で22%伸びた。同セグメントは、チェキのほかにも写真関連を扱う「イメージング事業」の売り上げの65%を占める。
イメージング事業の全社業績への貢献度は、売上高では14%だが、利益では24%(全社費用は除く)。稼ぎ頭といえる事業だ。なお、コロナ前にあたる2018年度のイメージング事業の売上高は3869億円。それが直近2022年度には4103億円となっている。
スマホの普及により、写真を撮るための機械であるカメラの販売台数は激減した。スマホと競合しない、カメラにはカメラのよさがあることは確かだが、プロ・ハイアマチュア向け以外に大きな需要は作り出せていないのが現状だ。
一方、チェキの楽しさはスマホと競合しない。電車では毎日のように、チェキで撮影したと思われる写真を身につけた人を見かける。キーホルダーとして鞄にぶら下げたり、透明なスマホカバーに挟んだり。チェキは今後も、スマホを味方に好調を維持しそうだ。
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