「送料無料」にトラック運転手がモヤる納得の理由 現場のルールは、現場を知らない人が作る

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この割引制度に苦しめられているドライバーや運送企業から多くの話を聞いてきた私は、その度に記事化したり国土交通省の官僚たちと議論したりしてきた。「こんな制度は今すぐやめろ」と。

それでもなかなか進展せず、その間やきもきしながら動向を見続けてきたのだが、多くの声によって、ようやく2022年末に変更が発表されるに至った。

が、その見直し案に、現場は絶句する。その案は、現場を走るトラックドライバーの労働環境を一変させる、現場いじめとしか言えないような内容だったのだ。

それがこれだ。

❶深夜割引の適用時間帯に走行した分のみ3割引
❷深夜割引の適用時間帯を現行の0時~4時から22時~翌5時に拡大
❸長距離利用者の負担軽減措置として、400㎞超の長距離逓減拡充

つまり、今までは割引適用時間内に1秒でも高速道路内にいれば、それまで走ってきた分の高速料金が3割引になっていたのが、今後は「22時~5時の間に走った分だけ」になるわけだ。

現場のルールは現場を知らない人によってつくられる

これは、国が「高速代を安く抑えたいならば夜に走れ」と言っていることともはや同義。

先にも言及した通り、運賃が全く上がらない運送業界にとって、深夜割引は「生命線」であるのに、今後割引を適用させるには、生活を昼夜逆転させ、夜に走らねばならなくなるのだ。

見直し時期と言われている2024年度には、トラックドライバーの働き方改革が施行されるが、これでどの口が「働き方改革」とか言うてんねん。

『やさぐれトラックドライバーの一本道迷路 現場知らずのルールに振り回され今日も荷物を運びます』(KADOKAWA)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

国は長距離利用者の負担軽減措置として、400㎞超の長距離逓減を拡充するとしたり、「激変緩和措置」などを設けているが、地方の運送企業からは「どんなに頑張っても今より高速料金が高くなる」という声が相次いでいる。

どうしてこうも毎度現場を疲弊させるルールばかりつくるのか。

そもそもなーんで国は、「運ぶ側」に高速料金を払わせる体で話を進めているのか。

実運送のトラックが荷主から直接高速料金をもらえる仕組みをつくるのが君たちの仕事やろ。

以前、国交省との会議中、ある官僚が話した「自分も妻の実家に行く時、深夜の高速がトラックばかりなのを見た」という話に絶句したことがある。

彼らは視察すらせんで、こんなルールつくってるのかと気付かされたのだ。

もう一度言わせてくれ。

「現場のルールはいつの時も現場を知らない人によってつくられる」と――。

橋本 愛喜 フリーライター

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はしもと・あいき / Aiki Hashimoto

大阪府出身。元工場経営者・トラックドライバー。ブルーカラーの労働環境問題などについて執筆。著書に『トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書)。

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