パナソニック、「10兆円構想」の課題とは? 成長に向けてカギを握るM&A戦略

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また、売上高が3000億円以上ある大規模な事業部のうち、営業利益率が5%未満だった6分野の採算改善も、成長のカギを握る。そのうちの一つ、エアコン事業については、利幅の大きい家庭用で稼ぎ、「大型空調への投資原資に使う」(津賀社長)と戦略を描く。

ほかにも照明事業は業務用LED、住宅システムはリフォーム向けといった具合に、各分野で好採算製品へのシフトを進め、2015年度に6事業部合計で5%達成へ、自信を示した。

利益優先から成長優先へ

これまでは課題のテコ入れに勤しんできたパナソニックだが、一通りの区切りがついたことで「利益優先から成長優先に舵を切る」と津賀社長は言い切った。「低収益の事業があれば、売り上げは落とさざるを得ない。そのためこれまでは、トータルで売りを伸ばしきれなかった。しかし利益率の基本が5%以上という形となり、ようやく成長へのスタートを切れる」(津賀社長)。

パナソニックはかねてから、2018年度の売上高10兆円という目標を掲げてきた。途上となる2015~2017年度に関してもそれぞれ8兆円、8.4兆円、9兆円と道筋を示す。

いまだ具体的な中身については明らかにされていないが、同社は今後M&A(企業の合併・買収)などの戦略投資に総額1兆円を注ぎ込むことも発表している。10兆円達成に向け、確実な一歩を踏み出せるか、スタートにあたる2015年度は重要な1年となりそうだ。

許斐 健太 『会社四季報 業界地図』 編集長

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このみ けんた / Kenta Konomi

慶応義塾大学卒業後、PHP研究所を経て東洋経済新報社に入社。電機業界担当記者や『業界地図』編集長を経て、『週刊東洋経済』副編集長として『「食える子」を育てる』『ライフ・シフト実践編』などを担当。2021年秋リリースの「業界地図デジタル」プロジェクトマネジャー、2022年秋より「業界地図」編集長を兼務。

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