中国が主導権を握っている「戦略物資」の地政学 「クリティカルミネラル」確保に各国が動く事情

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ふたつ目のリサイクルは、スマホの回収などでなじみのある方もいるかもしれません。例えば、スマホに使われているリチウムイオン電池の正極の材料には、コバルト、ニッケル、リチウムなどの金属資源が使われています。これらの資源を再活用する活動を展開している「JBRC(Japan Portable Rechargeable Battery Recycling Center)」は、携帯ショップや自治体の専用窓口でスマホを回収・リサイクルしています。

ただ効果的な実現のためには、リサイクル技術の確立や回収のためのシステムをつくることが課題とされています。

また、クリティカルミネラルには、供給源の分散が難しい物質もあります。そのようなケースでは、リサイクルを進めながら、同時に代替物質の研究を進めていくことになるでしょう。これが3つ目の取り組みです。

中国によるレアアース輸出禁止の教訓

2010年に尖閣諸島の問題が影響して対立が深まるなか、中国は日本へのレアアースの輸出を禁止したことがありました。実は、このときのことを教訓にその後日本では、相当力を入れて代替物質の研究を進めるようになっています。

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例えば、高価なコバルトを使わない リチウムイオン電池の開発では、パナソニックが力を入れています。同社はコバルトフリーの電池を実現する技術を確立しており、商品化に向けて取り組んでいます。

クリティカルミネラルを確保するための3つの対策が奏功するまでの間は、需給の厳しくなった物質は高値で取引されることになります。そうなれば、供給国が得る利益は莫大となります。

エネルギー安全保障の観点から考えると、理想的なのは需給が逼迫する前から新たな供給源を開拓、もしくは代替物質を開発することでしょう。各国は戦略的に安定供給を確保しようと非常にセンシティブになっています。

小山 堅 日本エネルギー経済研究所専務理事・首席研究員

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こやま けん / Ken Koyama

1959年、長野県生まれ。早稲田大学大学院経済学修士修了後、1986年日本エネルギー経済研究所入所、英ダンディ大学にて博士号取得。 研究分野は国際石油・エネルギー情勢の分析、アジア・太平洋地域のエネルギー市場・政策動向の分析、エネルギー安全保障問題。雑誌やテレビなどのメディアなどにも多数出演する。

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