家族と過ごす時間ほしい、転職を決意「公立小で孤軍奮闘」に疲れた先生の今 心身ともにすり減る学校現場に足りないこと

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職場環境としては、まだN/S高ができて5年。オンライン通学コースができて3年なので、さまざまな課題も出てくるが、そのたびに誰もが困らない環境を整えるためにどうしたらいいかという目線で話ができるのがよいと言います。

一個人としても、自分が働き方を変えたことで、家族に自分の仕事を見せることができている。子どもたちには、親が生き生きと楽しそうにしている様子を見せられていることが何よりうれしいと語ってくれました。

何より先生が心身ともに健康でいられる場であることが大切

最後にこれからの教育について聞くと、「学校はこれからよくなる一方だと信じている。でも、現状のスピード感を考えると、まだまだだと思う」という答えでした。館野さんと話していて印象的だったのは、「子どもたちのウェルビーイングを高めるためには、先生のウェルビーイングを高めることが大切。さらに言えば、家族のウェルビーイングにもつながっているのかという視点も大事」という言葉でした。

同じく元小学校教諭で、メンタルコーチとして活動中の中楯浩太さんにも話を聞きました。教員が置かれている現状について「公教育もいい加減何とかしないといけないと現場でもがきながら活動している人も多いのですが、いかんせん、挑戦へのハードルが高く、しがらみも強く、公務員としてのプレッシャーと日々の業務に忙殺され身動きが取れない状況にあるのだと思う」と中楯さんは言います。

当たり前のことですが、先生も一社会人です。それぞれの暮らしがあります。教員不足を補うために、待遇の改善や部活動の外部委託、学部生の早期採用など、いろいろな施策が検討され、手が打たれようとしています。それらはすべて大切なことですが、よい人材が集まるためには、何より先生にとって、心身ともに健康でいられる場であることが大切です。また、やりがいを感じられることも大切ではないでしょうか。

『モチベーション3.0』の著者ダニエル・ピンク氏も、変化の激しい時代に成果を出していくためには、そこに関わる人たちの「自主性」「成長」「目的」が大切だと述べていますが、まさに日本の教育を進化させていくためにも、意欲のある人たちの足を引っ張らない職場づくりをしてほしいなと思います。

子どもたちのウェルビーイングを高めるために、今できること。それは、先生のウェルビーイングが高められる環境を整えることではないでしょうか。そのためには、目先の改善も大事ですが、究極の教育の目的(何のために学校があるのか)を全員で共有できること。安心して挑戦ができるために、職場の心理的安全性が保たれること。教育に関わる人がやりがいを持てるように、一緒に子どもたちの学ぶ場をよくしていこうというまなざしで、周りも先生をリスペクトして応援することが大切なのではないかと感じました。

ギリギリのところで踏ん張っている多くの先生に、これ以上すり減らないで、子どもたちと向き合っていただけますように。

(注記のない写真:Luce / PIXTA)

執筆:教育ジャーナリスト 中曽根陽子
東洋経済education × ICT編集部

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