「100日連勤」、部活に疲弊する教員夫婦の絶望 「若手男性」教員はなぜ顧問を断れないのか?

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人間誰しも、愚痴を聞いてほしいときもあれば、喜びを分かち合いたいときもある。それは学校の教員も同じだ。つらい経験に共感したり、笑い話にほっこりしたり、はたまた、成功体験をシェアしたり――。今連載では、学校や教員が抱える問題を明らかにし、解決策のヒントを見いだすことや、やりがいや魅力を再発見する一助となることを目指していく。

今回登場するのは、小学校教員夫婦の妻。ただでさえ忙しい小学校の教員だが、それに拍車をかけているのは夫の部活。「学校の働き方改革」が進められる中で、土日も休めず“100日連勤”したという時代に逆行する教員の実情とは。

【エピソード募集中】本連載「教員のリアル」では、学校現場の経験を語っていただける方を募集しております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームからご記入ください。
投稿者:東村由香里(仮名)
年齢:30代前半
居住地:関東
勤務先:小学校(中学年の担任)

帰宅は22~23時、朝は5時半起床

教員同士の結婚は多い。忙しいのはもとより、異業種と交流する機会が少なく出会いの場が限られるということもあるだろうが、価値観が合いやすく、仕事の何が大変でどこに苦労しているのかが互いに理解しやすいのも大きいといわれる。

同じ小学校の教員として夫と出会い、結婚した東村由香里さんもそう考えていた。仕事には全力で打ち込み、週末の休日はゆっくり休む。その傍らに、気持ちをわかってくれるパートナーがいてほしい――、人としてごく当たり前の心情だろう。

「交際中は、そういう週末を過ごすことができていました。2人ともお酒が好きで、飲みながらスマホでイントロゲームをするのが金曜の夜の定番だったんです。『寝落ち』するまでそうやって笑い合って、土曜の朝は10時ぐらいまでのんびりと寝るのが楽しみでした」

しかし、こんなささやかな楽しみも味わえなくなってしまった。理由は、夫が運動部の顧問になったからだ。小学校で部活動を実施しているところは少なくない。スポーツ庁の「令和元年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査」によれば、小学5年生の男子のうち運動部に所属しているのは29.6%、女子は19.8%。ある程度の小学校で部活動が行われていると思われる。

もちろん、部活動そのものに問題はない。体力向上のほか、異年齢との交流の中で人間関係を構築する経験は有効であり、自己肯定感や連帯感を高めることにもつながる。しかし、社会が急速に変化する中で、学校教育に求められる役割は拡大する一方だ。教員の負担も増える中、これまでと同じ運営体制で部活動を維持することが難しくなっている。

文部科学省もそのことは把握しており、2017年の中央教育審議会「学校における働き方改革推進本部」で「部活動は必ずしも教師が担う必要のない業務」と報告書に明記。20年9月の会合では、23年度以降の休日の部活動を段階的に地域へ移行する方針を打ち出している。主に中学校、高校の部活動に言及したものだが、同様の課題から小学校の部活動を廃止、民間に委託した自治体もある。

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