先ほどの飲食チェーンの場合は、新規出店を加速する、営業時間を延ばすといった新しい方針が経営陣から出されました。こうなると、攻めの経営に伴う働きぶりが社員に期待されるようになります。そしてそれは、社員にとっては新たな負担になったりもします。
例えば、店舗の売り上げ目標が大きく増える。勤務シフトが増え、残業が増える。新規採用が増えるので、その育成業務が増える……といったことです。
コロナで業績が厳しい時期に、やや、のんびりと働いていたとすれば、急激な転換に戸惑う人も少なくないかもしれません。
店舗に活気が出てきたことは嬉しいものの…
居酒屋チェーンに勤務するFさんもそんな一人。コロナの間は店舗の営業時間が短くなり、メニューの改定も行われず、新規採用もゼロ。来店客がそれなりにあって、忙しい時間帯もありはしたものの、総じて言えば、楽をしていたと自覚しているそうです。
ただ、その楽な働き方に慣れてきていたタイミングに経営陣から方針転換のメッセージが出されました。「お客様にたくさん来店いただける状況になりました。深夜営業を復活します。当然ながらシフトに入れるスタッフの新規採用に力を入れています。現場での教育はお願いします」というのです。
翌週から新スタッフが店舗に入ってくるようになりました。当然ながら育成のために時間を割く必要があります。店舗に活気が出てきたことは嬉しいものの、勤務時間が増えることは悩ましいようです。
こうした、物理的な負担に加えて、攻めの経営の象徴として、社員が新規事業やイノベーション開発に取り組むことを期待する動きも出てきています。
例えば、ある食品メーカーでは新規事業を考えるプランを企画するワークショップを全社員が受講。その経験を踏まえて、次世代に向けた新規事業のプランを提出することが半ば義務化されました。
アフターコロナの成長のためには新規事業の立ち上げが必要。そうしたプランを考えるのは経営陣だけでなく、全社員が取り組むべき、というのです。提出されたプランの出来栄えは人事評価にも反映されます。当然ながら業務時間内での作業となりますが、本業は忙しさが加速しており、その中で新規プランを、となると残業を増やすしかない状況のようです。
このように、いくつかの面で攻めの経営による負担が社員に強いられつつある企業が増えているように感じられます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら