置き去り防止に一役「バス降車ボタン」意外な進化 バス機器のレシップ開発、無線式で電池も不要
降車する意思を知らせるだけのシンプルな装置だけに、利用者の立場からすると昔からあまり進化がなさそうな印象だが、レシップは2022年4月、バス業界にとって画期的といえる新製品の販売を開始した。
大型の路線バスの場合は約40個のボタンが付いている。従来は各ボタンと運転席周辺の制御器をハーネスでつなぐ必要があったが、無線式にすることで配線を不要にした。配線が困難な場所に取り付けられ複雑な工事の手間を省くことができるほか、ハーネスの重量を約10kg削減、バスの燃費向上も期待できるという。
配線も電池もいらない
ボタンは押した力を電気に変えて発信するため電池も不要。無線式だが、車両ごとにIDで“ひもづけ”がされていて近くにいるバスと混線することはない。有線式と併用して導入することもできる。
開発の検討は10年ほど前から。同社公共交通設計部長の鷲見義和さんは「1台に40個もボタンが付いていると、不具合が発生した場合、配線のどこがおかしいのか調べるのに1日、2日と時間がかかることもある。車体メーカーやバス事業者から配線がなくせないかという話があった」と背景を説明する。
同部リーダーの池脇真也さんは「バスの中で確実に電波が飛ぶように試行錯誤した」と開発の苦労を振り返る。テスト用のバスに「社内の人を集めてギュウギュウ詰めにしてバスの後ろのほうでボタンを押す、といった実験をした」(鷲見さん)という。
2階建てバスや連節バスのほか、観光バスタイプの車両を路線バスに転用する場合、海外製の車両に取り付ける場合などにもメリットがある。降車ボタンの同社のシェアは2023年3月末時点で34%ほど。現時点では有線式のほうが安価だが、量産が進めばコストが下がり、採用拡大も期待できそうだ。
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