女子高生がゲイカップルと暮らし希望感じたワケ 「自己肯定感が回復する家」子どもを癒す"第3の居場所"

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 整理されたキッチンにかけられた、2人のエプロン。それは、家事分担しつつ生活する彼らの幸せな日常を象徴するような光景でした(ただし、Tomoさんは片付けが苦手なので、Shoさんによく怒られているそうです笑)(写真:筆者撮影)

3回にわたって紹介してきた同性カップルの養育里親活動ですが、「児童相談所から養育費用は出るの?」という点が気になった人もいるのではないでしょうか。彼らに質問したところ、回答は「食費や雑費などの生活費的なもの+手当的なお金が出る」とのことでした。ただ彼らは「必要経費を除いたお金は実は貯金している。里子たちとはいまも交流があるので、彼らが成人したら渡したい」とのことでした。

Shoさんは養育里親制度についてこうも言います。

「日本は、里親制度の認知度も低いし、実際に里親の数も少ない。そういう意味ではもっと認知度は広がるといいと思うけど、かといって、審査があまりゆるくなりすぎるのはキケンだとも思う。里親は誰でもいいわけじゃない。たとえ面倒くさくても、審査はしっかりと、慎重にやることが、子どもの幸せにつながる」

彼らは今後、いい出会いがあれば、長期の受け入れもありえるかもしれないと言います。

ちなみに、里親制度とは別に「特別養子縁組」という制度もあり、これは戸籍的にも家族(実子と同じ扱い)になり、親権も持つことができます。ただ、この制度が使えるのは入籍している夫婦だけ。同性婚制度がない日本の同性カップルは養育里親にしかなれないのが現状です。

“お別れ”にまつわる活動も

ところで、Tomoさんは、里親活動のほかに、LGBT団体の代表としての活動もしています。その団体は、LGBTパートナーとのお別れにまつわるいろいろ(葬式やお墓作り、相続など)をサポートする団体だそう。僧侶かつゲイであるという特殊性を生かした活動です。

Shoさんは「いっしょに死にたい」と言っていましたが、それでもいつか、このお2人にもお別れのときがきます。きっとその日まで、2人は、この東京郊外の一軒家に、いろんな人や動物を迎え続けていくんだろうな、そんなふうに感じた取材でした。

次回は、育児中同性カップルのまた別のカタチ「実子を育てる同性カップル」について紹介します。

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ハラユキ イラストレーター、コミックエッセイスト

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はらゆき / Harayuki

雑誌、書籍、広告、Webなどの媒体で執筆しつつ、コミックエッセイの著書も出版。2017年から約2年間バルセロナに住んだことをきっかけに、海外取材もスタートさせる。著書に『女子が踊れば!』 (幻冬舎)、『王子と赤ちゃん』(講談社)、『オラ!スペイン旅ごはん』(イースト・プレス)、この連載を書籍化した『ほしいのはつかれない家族』(講談社)など。この連載のオンライン・コミュニティ「バル・ハラユキ」も主宰し「つかれない家族をつくる方法」を日々探求、発信中。ハラユキさんのHPはこちら

 

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