政治家の「遺憾の意」にモヤっとしてしまう理由 事態を引き起こしたことに対する責任は曖昧に

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別のケースを紹介します。前横浜市長の林文子氏がカジノなどを含むIR=統合型リゾートの誘致を表明し市民が強く反発したことがあります。公約の「白紙」から一転、誘致表明に転じたからです。記者会見で次のようなやりとりがありました。

記者:「市長選で『白紙』だと言ったのは間違った判断だと思わないか?」

林市長:「思わないですね。事実『白紙』でしたから」

記者はこれ以上、突っ込まなかったのですが、これでは失当です。少なくとも次のように切り込んだら状況が変化したと思います。

記者:「市長選で白紙だと言ったのは間違った判断だと思わないか?」
林市長:「思わないですね。事実『白紙』でしたから」

記者:「林市長は、フォルクスワーゲンジャパン販売の社長、ダイエーの会長兼CEO、東京日産自動車販売の社長を歴任しています。フォルクスワーゲン、ダイエー、日産で『白紙』はどのような意味で使われていますか?」

ビジネスの最前線で活躍されていた林氏の言葉ですから非常に重いものになるはずです。

裏切られたような印象を残す可能性

「白紙」には新しい状態にすること。「まっさらな状態にしてやり直す」という意味があります。これはビジネスに置き換えるとわかりやすいと思います。

「条件が変わらないのであれば取引を白紙にします」

取引先がこのように言ってきたらどうでしょうか? 条件が変更されなければ取引は中止になると考えるのが一般的です。「何もなかった状態に戻る」という意味です。

政治家が言葉を使い分けることは大切なスキルであることは言うまでもありません。しかし、有権者にとって裏切られたような印象を残すことは好ましくありません。信頼感が揺らいで政治不信につながる危険性があるからです。言葉の解釈で押し切っても有権者は納得しません。政治家の説明は具体的でなければ説得力がありません。

尾藤 克之 コラムニスト、作家、著述家

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びとう かつゆき / Katsuyuki Bito

東京都出身。議員秘書、大手コンサルティングファームで、経営・事業開発支援、組織人事問題に関する業務に従事、IT系上場企業などの役員を経て現職。現在は障害者支援団体のアスカ王国(橋本久美子会長/橋本龍太郎元首相夫人)を運営しライフワークとしている。NHK、民放のTV出演、協力多数。コラムニストとしても、「JBpress」朝日新聞「telling,」「オトナンサー」「アゴラ」「J-CASTニュース」で執筆中。『あなたの文章が劇的に変わる5つの方法』(三笠書房)、『即効! 成果が上がる 文章の技術』(明日香出版社)など著書多数。埼玉大学大学院博士課程前期修了。経営学修士、経済学修士。

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