政治家の「遺憾の意」にモヤっとしてしまう理由 事態を引き起こしたことに対する責任は曖昧に
別のケースを紹介します。前横浜市長の林文子氏がカジノなどを含むIR=統合型リゾートの誘致を表明し市民が強く反発したことがあります。公約の「白紙」から一転、誘致表明に転じたからです。記者会見で次のようなやりとりがありました。
記者:「市長選で『白紙』だと言ったのは間違った判断だと思わないか?」
林市長:「思わないですね。事実『白紙』でしたから」
記者はこれ以上、突っ込まなかったのですが、これでは失当です。少なくとも次のように切り込んだら状況が変化したと思います。
記者:「市長選で白紙だと言ったのは間違った判断だと思わないか?」
林市長:「思わないですね。事実『白紙』でしたから」
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記者:「林市長は、フォルクスワーゲンジャパン販売の社長、ダイエーの会長兼CEO、東京日産自動車販売の社長を歴任しています。フォルクスワーゲン、ダイエー、日産で『白紙』はどのような意味で使われていますか?」
ビジネスの最前線で活躍されていた林氏の言葉ですから非常に重いものになるはずです。
裏切られたような印象を残す可能性
「白紙」には新しい状態にすること。「まっさらな状態にしてやり直す」という意味があります。これはビジネスに置き換えるとわかりやすいと思います。
「条件が変わらないのであれば取引を白紙にします」
取引先がこのように言ってきたらどうでしょうか? 条件が変更されなければ取引は中止になると考えるのが一般的です。「何もなかった状態に戻る」という意味です。
政治家が言葉を使い分けることは大切なスキルであることは言うまでもありません。しかし、有権者にとって裏切られたような印象を残すことは好ましくありません。信頼感が揺らいで政治不信につながる危険性があるからです。言葉の解釈で押し切っても有権者は納得しません。政治家の説明は具体的でなければ説得力がありません。
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