徒労感しかない「筋の悪い成長戦略」からの脱却法 打ち手に迷う経営陣のための成長の標準モデル

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本書では、成長のエンジンとして3種のシンコウ(深耕、新興、進攻)を区別した。

110ケースを一見したところ、多様な成長パターンが登場したが、それは表面上の相違に過ぎない。よくよく考えてみると、次の標準モデルが様々なケースを漏れなく包摂することがわかる。

企業成長の標準モデル

企業成長の標準モデルは、事業立地の選択からスタートして、競争優位の構築フェーズに進んでいく。そこで優位の確立に成功すると、国内深耕によって企業成長が実現する。

このフェーズが飽和に近づくと、次は海外市場の進攻に転じることで成長を長らえる。

しかし海外も頭打ちになってくると、その先は別の事業立地を開拓(新興)して、そこで同じサイクルを繰り返すことになる。

事業立地を選択(新興)したあと深耕に進むのが合理的なのは、ほかのオプションに比べて経営資源の投下効率が高いからである。

深耕(国内)から進攻(海外)に進むのが合理的なのも、同じ理屈による。

すでに投下した経営資源はサンクコストと見なすべきであるが、追加投資を引き下げる効果はリアルである。それが論理の底辺を成す。

トヨタと日東電工の成長の違い

成長エンジンがケース間で深耕と新興と進攻に分かれたのは、進度の違いによる。

進度の違いは創業の時期と市場の規模を反映している。

他の条件が同じなら創業が早いほど先のステージに進むし、国内や海外の市場が小さいほど制圧に時間を要しないので、やはり次のステージに進むタイミングが早くなる。

たとえばトヨタ自動車が自動車専業で半世紀以上も成長を紡ぐことができたのは、自動車市場が類を見ないほど巨大だからである。

一方日東電工が売り物をテープからフィルム、売り先を電気から建築、自動車、医療と拡げて成長に結びつけざるをえなかったのは、個々の市場が小さいからである。

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