SBI新生銀、TOBでも簡単ではない公的資金返済 少数株主との平等性を保ちつつ返済は可能か

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SBI新生銀にとって、かねて懸案だったのは前身の旧日本長期信用銀行が破綻した1998年に国から注入された公的資金の返済だ。現在、未回収の額は約3500億円。その返済は進むのだろうか。

公的資金の返済には、これまでも難しい壁が立ちはだかっていた。返済すべき公的資金の裏付けとなっているのは、政府系株主が保有する22.98%(約4900万株)の株式。政府系株主が保有分を売却すればその分が「回収額」となる。

ところが、新生銀の株価は2000円近辺で推移しており、政府系株主の持分では1000億円程度の価値しかない。3500億円を回収するためには単純計算で株価が3倍超に上がる必要があり、7000円を超える水準にならないといけない。このことが足かせになり、政府系株主は新生銀の株式をいつまでも手放せない袋小路に陥っていた。

少数株主との不平等

逆に言えばSBI新生銀の株式は、将来の返済に伴って「7000円」を超える価値になりうる株式だ。今回のTOBは、その株を「2800円」で買うということになる。少数株主から見れば、不平等ともとられかねない。

非公開化すれば、市場での株価はつかなくなり、政府系株主が持つ株式の価値は明確には見えなくなる。しかし、不平等になる懸念を考慮すれば、政府系株主が持つ4900万株に要回収額である3500億円をすぐさま払うわけにもいかないだろう。

SBIはこの問題をどう考えているのか。TOB開始を知らせる公表文によると、「持株比率に応じた配当を行う方法等により公的資金の返済を行う」としている。要するに、今は2800円が適切であるSBI新生銀の企業価値を、時間をかけて向上させ、配当の形で返済していくということだ。

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