朝の輸送に見た「東武伊勢崎線」列車種別の醍醐味 特急・急行・準急…その位置づけには個性が

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都心側の一定区間で急行運転をする列車も、郊外部分は各駅停車となる。これは都会から郊外に広がる大都市通勤鉄道の運行パターンの一大特徴で、速達性と高頻度の両方が求められるためだ。遠距離と近距離で乗客の分散にも役立つ。南栗橋や東武動物公園などに発着する普通もときおり混ざるのは、入出庫の関係や、時間によっては部分的に本数を確保したいなどの事情が絡むと思われる。

一方、最多本数を必要とするピーク時間帯を過ぎると、春日部の断面で捉えると急行は7時台をもっていったん運転がなくなり、8時台は区間急行を主体に準急および日比谷線直通電車それぞれ若干で上り方向の輸送を賄う。そのままでは半蔵門線直通が不足するので、途中、北越谷発の準急も少数加える。9時過ぎに区間急行の運転が終了すると、11時直前までの間は急行1本を例外として準急が主力列車を務める。そして11時台以降は、急行と普通がそれぞれ10分間隔、毎時6本ずつのシンプルなパターンダイヤに移行している。

答は半蔵門線直通車両の使い方にあり

これらの変化には、運行サイドの隠れた工夫が満載されており、興味深い。朝はピーク時に最大限の数の10両編成を都心―田園都市線へと走らせるため、その後は地下鉄直通車が底を突く。そこで余裕を残しておいた東武線内用編成を区間急行として走らせる。また、ピークを過ぎれば急行と各駅停車列車を分けて乗客の分散を図る必要性も多少薄まるため、準急として一つにまとめて所要の編成数を節約する。北越谷発着の準急で10両編成を折り返し運転すれば、それも編成の回転率を上げられるという訳だ。

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北千住―東武動物公園間では普通はすべて日比谷線直通電車(始発・終電時間帯は除く)という点も、急行や準急の半蔵門線直通同様、都心直通を柱とする全体像の中での大きな特徴だ。越谷場面で見ると朝の普通は約5〜10分間隔なので、間隔が開く部分については都内足立区に入った竹ノ塚でさらに列車を差し挟み、間隔をそろえる形になっている。以前の日中パターンには浅草―竹ノ塚間の普通もあったが、竹ノ塚駅付近の連続立体化工事の進展に伴う2020年6月ダイヤ改正以後はない。

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