ホンダがEVシフトへ進める仲間づくりの真意 4輪事業の営業利益率は0.4%、収益向上が急務
近年、悩まされてきた半導体の調達にも手を打った。
4月26日の説明会では、世界最大の半導体メーカーである台湾TSMCと戦略的協業で合意したことを公表。他の半導体メーカーとも調達について交渉しているという。従来は部品メーカーが調達していた半導体も含めてホンダが一括で調達することで、サプライチェーンを安定化する狙いだ。
このようにホンダがEVの主要部品でパートナーとの関係強化に動く背景には、サプライチェーンにおいて、とりわけ電池や半導体では、自動車メーカーのコントロールが利きにくくなっている現実がある。
「緩やかな垂直統合型のサプライチェーンを構築していく」「(部品の調達について)内作か外に出すか、一緒にジョイントベンチャーでやるか、いろいろな選択肢はあるが、上流の技術は我々で持っていないとただの買い物になってしまう」と三部社長は危機感を隠さない。
ホンダも自動化・知能化を進めた新たな生産ラインや車載ソフトウェア技術の開発も進めており、一連のサプライチェーンの再構築は、競争力のあるEV投入に向けた施策の一環といえる。
収益性が低迷する4輪事業
EVは基幹部品である電池の価格が高いため、ガソリン車に比べて利益を上げることが難しいとされる。そのうえ、ソフトウェアなどの研究開発費や電池を含めた生産体制の整備にも巨額を投じる必要がある。どうやって投資資金を稼ぎ出すのか。各社に共通した悩みだが、とりわけホンダにとっては大きな問題である。
5月11日に発表した2023年3月期は、営業利益が8393億円(前期比3.7%減)と小幅減益だったものの、利益水準自体はIFRS(国際会計基準)となった2016年3月期以降で3番目と決して悪くなかった。ただし、肝心の4輪事業の営業利益率はわずか0.4%だった。
青山真二副社長と藤村英司CFO(最高財務責任者)は、半導体不足に起因する生産の停滞や品質関連費用がかさんだことなど、一時的な要因が利益率を押し下げていると説明した。だが、ホンダの4輪事業の営業利益率はここ数年1~2%台で低迷している。
4輪事業は、2代前の伊東孝紳社長によるグローバル600万台の拡大路線がうまくいかず採算が大きく悪化した。その後は、八郷隆弘前社長時代からグローバルでの派生車種の整理や生産能力の削減、研究開発子会社である本田技術研究所の組織再編といった施策に取り組んでいるが、効果は明確には表れていない。
足元は稼ぎ頭の2輪事業が絶好調で、ホンダの全社ベースの営業利益率は5.0%と、日産自動車(3.6%)やマツダ(3.7%)を上回っている。EV関連の研究開発費や設備投資について、青山副社長は「中期的には2輪事業で稼いでいきたい」という。
もっともこの先、2輪事業も電動化が加速することは確実で、現在の高収益を維持できるかはわからない。売上高の約3分の2を占める4輪の収益改善は急務だ。
ホンダは2024年3月期に過去最高となる1兆円の営業利益を見込む。4輪事業も半導体不足の緩和に伴う生産台数の増加や新車の値上げの浸透で増益を計画している。しかし、EVが急速に普及する中国で2023年1~3月期の新車販売台数が前年同期比で37%減と大きく減少するなど不安も多い。
EVに絡む一連の構造改革を進めると同時に、まずは自動車、大半はEVではないガソリン車を着実に売っていく、その当たり前のことが求められる。
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