ChatGPTが「愛されるロボット」になるための秘訣 弱いロボット生みの親に聞くAIと人間の関係性
ロボットの不完全さをさらけ出す意味
――そもそも、岡田先生が「弱いロボット」を作ろうと考えたきっかけは何だったのでしょうか。
「ゴミ箱ロボット」は、20年前の「愛・地球博」のときに新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が未来志向のロボットを募集した時期があった。地球環境がテーマだったので、自分一人ではゴミを拾えないけど、(ゴミがあることを知らせて)子供たちに拾ってもらえるようなロボットがあったら面白いと思い、提案した。
ただ技術も大したものではなかったし、「人の手助けでゴミを拾うようなロボットはロボットではない」と評価されずに書類審査で落とされてしまった。でもその発想が面白くて、今の大学に移ってからも学生たちと作っている。
最近はファミレスで猫型の配膳ロボが動いているが、あれの面白いところは、ロボットがよたよたと店の中を歩いていると人間が道を譲ってくれるところだ。そしてお客さんの席まで運んでも、配膳まではしてくれない。ちゃっかりと人の手を借りて、手伝った人間側も嬉しくなる。
人ができることと、ロボットができることを組み合わせて、目的を果たしてしまう。これが弱いロボットの発想でもある。
――ロボットを“完璧”にしないことのメリットはどこにあるのでしょうか。
よく考えるのは、私たちの手とはさみの関係だ。はさみは硬い鋼を持っていて、人間の柔らかい性質を補って紙を切る。一方で私たちの手の柔らかさは弱みではあるが、はさみを使ううえでは柔軟性が強みになる。
実際はロボットにも弱いところがたくさんあって、その不完全さをさらけだすと、そこに人間の関わる余地が生まれる。人間の強みや優しさをうまく引き出してくれて、ウェルビーイング(心身の幸福)を向上させる関係性を作ることができる。