ChatGPTが「愛されるロボット」になるための秘訣 弱いロボット生みの親に聞くAIと人間の関係性

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「弱いロボット」を研究・開発する岡田美智男氏は、今のChatGPTについて「優秀だが、(人間が)どうしても距離を感じてしまう」と指摘する(上画像:ChatGPTの公式サイトより、下写真:記者撮影)
2022年11月のサービス開始以来、世間を賑わしている「ChatGPT」。その言語生成能力を、ロボットに活用しようとする動きも出始めている。
一方で人間らしいコミュニケーションにはまだ課題があるのが現実だ。「ドラえもん」のような、愛着の湧くコミュニケーションロボットを作るには何が必要なのか。
豊橋技術科学大学の岡田美智男教授は、人間とロボットのコミュニケーションについて研究し、人に助けてもらいながら行動する「弱いロボット」の概念を提唱したことで知られる。弱いロボットの概念は、5月16日から一般販売を始めたパナソニックのコミュニケーションロボット「ニコボ」にも反映されている(詳細はこちら)。
愛されるロボットを作る秘訣、そしてChatGPTなどの生成AIと人間が共存していくうえでの課題について、岡田教授に聞いた。

ロボットの不完全さをさらけ出す意味

――そもそも、岡田先生が「弱いロボット」を作ろうと考えたきっかけは何だったのでしょうか。

「ゴミ箱ロボット」は、20年前の「愛・地球博」のときに新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が未来志向のロボットを募集した時期があった。地球環境がテーマだったので、自分一人ではゴミを拾えないけど、(ゴミがあることを知らせて)子供たちに拾ってもらえるようなロボットがあったら面白いと思い、提案した。

岡田教授らが開発したゴミ箱ロボット。ゴミを見つけると「モコ」と話し人間の注意を引くが、自分でゴミを拾うことはできない。人間がゴミを拾うとお辞儀をしてくれる(記者撮影)

ただ技術も大したものではなかったし、「人の手助けでゴミを拾うようなロボットはロボットではない」と評価されずに書類審査で落とされてしまった。でもその発想が面白くて、今の大学に移ってからも学生たちと作っている。

最近はファミレスで猫型の配膳ロボが動いているが、あれの面白いところは、ロボットがよたよたと店の中を歩いていると人間が道を譲ってくれるところだ。そしてお客さんの席まで運んでも、配膳まではしてくれない。ちゃっかりと人の手を借りて、手伝った人間側も嬉しくなる。

人ができることと、ロボットができることを組み合わせて、目的を果たしてしまう。これが弱いロボットの発想でもある。

――ロボットを“完璧”にしないことのメリットはどこにあるのでしょうか。

よく考えるのは、私たちの手とはさみの関係だ。はさみは硬い鋼を持っていて、人間の柔らかい性質を補って紙を切る。一方で私たちの手の柔らかさは弱みではあるが、はさみを使ううえでは柔軟性が強みになる。

実際はロボットにも弱いところがたくさんあって、その不完全さをさらけだすと、そこに人間の関わる余地が生まれる。人間の強みや優しさをうまく引き出してくれて、ウェルビーイング(心身の幸福)を向上させる関係性を作ることができる。

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