日本人が開発「薄くて曲がる」太陽電池のすごみ 髪の毛より薄い「ペロブスカイト」で生活が変わる

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日本発の技術が、個人の行動変容を助けるゲーム・チェンジャーとなる可能性がある。それが、次世代の太陽電池として急速に期待が高まっているペロブスカイト太陽電池だ。

ペロブスカイトとは、元々は鉱物の名称で、発見者であるロシア人鉱物収集家ペロブスキーから付けられたとされている。宮坂教授の研究チームは、この特殊な結晶構造を持つ化合物を利用し、光を電気に変えることを発明、2009年に最初の論文をアメリカで発表した。

(写真:桐蔭学園・横浜市提供)

ペロブスカイトの発電層は、0.5ミクロン(1ミクロンは1000分の1ミリ)と髪の毛よりも薄い膜で、これをフィルムの電極基板に被覆すると、厚みが0.2ミリ以下の太陽電池となる。現在主流の太陽光パネルに用いられているシリコン型太陽電池と異なり、薄く、軽く、曲げられるのが特徴だ。

また、インクの印刷のように、塗って乾かすだけなので、製造期間も短い。さらに、曇や雨の日、蛍光灯の光など弱い光でも発電する強みを持つ。主材料は国内で調達できるため、量産化が進めば、製造コストはシリコン製を下回ることが見込まれている。

ちりも積もれば山となる

光をエネルギーに変える変換効率は研究当初、1〜4%程度だったが、最近では実験ベースで25%超まで上昇しており、既存のシリコン型と遜色がない。これまで設置が難しかったビルの側面や柱、電気自動車にも設置可能になる。

そのほか、キャンプ用テント、ジャケット、気球、小学生用のランドセルなど、対象はいくらでも広がる。災害時に、スマートフォンの充電に困ることもなくなるだろう。

気候変動は、エネルギーの問題であり、安全保障にも関係する。日本が石油などの化石燃料を輸入し、使い続ければ、温室効果ガスは一向に減らない。ウクライナ戦争による資源価格の高騰で電気ガス料金が上昇し、企業や家計を直撃したことは記憶に新しい。

ペロブスカイト太陽電池の発明者である桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授(筆者撮影)

宮坂教授は、各世帯が洗濯機や冷蔵庫と同じような感覚でペロブスカイト太陽電池を買い、マンションなどのベランダに置けば、発電量は「ちりも積もれば山となる」と語る。

その上で、各世帯で電気の自給自足と節電が進むことで、日本のエネルギー海外依存率が現在の約82%から、30%(自給率70%)ぐらいに下がるだろうと話す。宮坂教授は、30%に下げられると、海外有事などで資源輸入が止まった場合も、「省エネで何とかやっていける」と語る。

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