日本株の崩落が、いよいよ始まった? 米ドル安をめぐる「2つの謎」は解けるか
この「米ドル下落」に関しては、「2つの謎」がある。すなわち、欧州では、ECB(欧州中央銀行)の緩和姿勢維持やギリシャ問題のごたごたは、本来はユーロ安要因だが、それを跳ね返して先週初(4月13日)からはユーロ高・米ドル安になるという、一つの謎が生じている。
また原油については、米国が将来イランへの経済制裁を緩和し、イラン産の原油が市場に出回るという観測にもかかわらず、原油価格が強含むという、もう一つの謎が生じている。
「米ドルしか買えない」というシナリオに無理が生じた
この2つの謎を解くカギは、対ユーロでも対原油でも、米ドル安がぐいぐいと生じ始めたという点にあるだろう。
この米ドル反落の背景としては、前回のコラムでも述べた、「世界中で景気が良いのは米国だけだ、米ドルしか買える通貨はない」というシナリオに無理が来ていることが挙げられる。
加えて、米国企業からは、米ドル高が収益を圧迫しているとの怨嗟の声が聞こえ始めた。2015年1~3月期の企業決算発表が既に始まっているが、全産業の一株当たり利益は、対前年で減益が見込まれている。これが米国株価の重石として働き始めた。
こうした米ドル高の悪影響は、4月15日(水)発表のベージュブック(地区連銀経済報告)でも指摘されていた。また同月9日(木)公表の米財務省の為替報告書でも、日欧が金融緩和に依存し過ぎていると指摘している。これは米国が、緩和による日欧の通貨安政策を批判したものだと解釈されている。
さらに13日(月)には、浜田宏一米エール大学名誉教授が、「購買力平価からみれば、120円はかなり円安である」と述べ、円の買い材料となった。筆者が算出する購買力平価を用いても、現在の円相場は約20%円安に行き過ぎていると計算される。過去に20%超円安が行き過ぎた局面を探すと、1983年と1985年の2回しかない。
その後何が起こったかと言えば、プラザ合意、すなわち行き過ぎた米ドル高を修正しようとの国際的合意がなされた。今回そうした国際的合意などはありえないが、米国にとっては、当時と同様にやりきれない米ドル高なのかもしれない。
米国株の軟調展開も、「米国株しか買える物がない」という米国一人勝ちシナリオに疲れが生じた、と考えられる。そこに週末、中国当局が資産運用会社に対して、空売りのための株式を貸し出すことを容認した(投資家が、資産運用会社から株を借りて売ることができるようになった)との報道を受けて、「中国株暴落懸念」という悪材料が上乗せされたと解釈できる。
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