安すぎ日本人の給料「毎年4.2%ずつ」上げるべき 人手不足の時代、「引き上げ交渉」は怖くない
個々の企業が適切なベースアップを行っているかを見るためには、同じ条件の給料を比較しなくてはいけません。前回記事(安すぎる「日本の初任給」最低賃金のたった1.31倍)でも、日本の大卒男性の初任給の推移を紹介しましたが、大卒男性の初任給のデータは最も根本的なベースアップを測るための指標になります。
「1.4%のベースアップ」を求める根拠
さて、先ほど定期昇給に加えて1.4%のベースアップを求め続けるべきだと述べましたが、1.4%という数字には、人口動態に基づいたきちんとした根拠があります。
ここ数十年、日本の生産年齢人口は減少の一途をたどり、2022年現在で1995年に比べて、1299万人も減っています。
同時期、それまで就業していなかった層の人たちにも労働参加を促し、就業者数を増やすことによって雇用は増えましたが、日本の労働参加率は世界でも最高水準に達してほぼ完全雇用の状態になっています。もう、これ以上の増加を期待することはできません。
一方、高齢人口は増加し続けているので、年金と医療費の負担は増大する一方です。生産年齢人口、すなわち、最も多くの納税をし、最も多く消費をする層の人口が減っているので、現役世代の1人当たり負担は重くなる一方です。
悪いことに、日本では2060年までに、生産年齢人口がさらに3000万人も減少してしまいます。当然、現役世代の負担はさらにさらに重くなります。その重くなる負担を相殺するためには、1.4%のベースアップが不可欠だという計算になるのです。
高齢者が増えるのに納税者は減るので、適切にベースアップがされないと、社会保障負担が増加する分だけ、現役世代の手取りをさらに減らすことになります。
高齢者の増加に伴う負担増は、納税者の給料上昇によってまかなうしか方法はありません。そしてそのためのベースアップは、労働生産性の向上がなくては不可能です。労働生産性の向上は、イノベーションによってのみ実現されます。
政府によるマクロ経済政策は、後方支援になることはありますが、それだけでは労働生産性は上がりませんし、皆さんの給料も上がりません。
給料を増やす責任は皆さん1人ひとりが負わなくてはいけないのです。政府のマクロ政策や経営者に期待しても、何もいいことはありません。まったく給料が上がらなかった過去30年の歴史が、そのことを如実に証言してくれています。
1人ひとりが給料を増やすために動き出さなくては、日本の皆さんは、さらに貧乏になってしまうのです。数年前、『安いニッポン』(日本経済新聞出版)という本がベストセラーになりましたが、このままでは「安い」どころか日本の皆さんは「大貧民」になってしまいます。
そんな悲惨な事態になるのを回避するためには、最低でも、「インフレ率+4.2%」の給料アップを要求し続けましょう。もし、いま勤めている会社がそれに応える見込みがないならば、給料が年々上がっている「普通の国」の人々のように、転職先を真剣に探すべきだと思います。
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