格安切符で旅客急増、ドイツ鉄道で多発する遅延 インフラ投資必須だが「鉄道優先政策」揺らぐ
ともあれ、2022年は黒字となったDBグループだが、2023年についての見通しは決して明るくなく、再び赤字に転落すると予測している。
2023年は、非常に高いエネルギーコストと、大幅に膨らんだ設備投資額がグループ全体の重荷となるとDBは懸念しており、加えて高騰した輸送運賃が正常化したことに伴う収益減少が予想されていることから、DBグループの経費と収入のバランスを適正化させることに気を配る必要がある、との見解を示している。インフレ率やインフラのアップグレードなどによって、今期は約10億ユーロ(約1478億円)の営業損失を見込んでいるという。
過去に前例のない、中道左派の社会民主党、緑の党、および中道右派の自由民主党による3党連立で発足したドイツ政府は、2021年の総選挙後に自動車道を中心とした新しい道路よりも、鉄道インフラへの投資を優先する連立協定を締結して政権に就いた。
しかし、運輸省を仕切る自由民主党は高速道路建設の推進を提案するなど、政府内に相反する政策が混在することで、その期待が裏切られることも否定できない。
政府は「自動車優先」に転換?
運輸大臣(デジタル・交通大臣)を務めるフォルカー・ヴィッシング氏は、連立政権の最大勢力である社会民主党の支援を得て、新しい高速道路の建設を提案、交通予測では今後数十年で自動車の台数はさらに増加すると主張している。2030年までに鉄道旅客数を倍増させ、鉄道の市場占有率を25%に引き上げるという、連立政権発足時の合意は無視されたと考えて間違いないだろう。
また、ヴィッシング氏は欧州連合(EU)に対し、2035年以降に内燃機関を搭載した新車販売を禁止するという計画について支持しないことを表明。EUは同年以降も環境に配慮した合成燃料を使用するエンジン車については販売を認めると方針を転換した。
こういった政権の動きは、ドイツ鉄道をはじめとする同国内の鉄道会社にとって頭の痛い問題と言える。列車の定時性確保などサービス改善へ向けた取り組みには、政府の鉄道インフラへの投資が必要不可欠となる。環境問題などへの関心の高まりで鉄道の客足は増え、列車本数も増加しているものの、それを支えるインフラが十分整備されていないために定時運行が難しくなってきているのが現状だ。
この先、鉄道への投資が鈍化するようなことがあれば、ドイツの鉄道全体が衰退することにも繋がりかねないだろう。
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