コンサルで通用する思考力は「小学校国語」で学ぶ 文章読解で学んだ「構造を読み解く力」とは?

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構造読解力は次の3つの構成で成り立っています。

1 論説的文章を読んで、論理を読み解く
2 物語、情緒的文章を読んで、人の心情を読み解く
3 思考を組み立てて、解釈する/アウトプットする

つまり、論説文の読解で論理的思考力を鍛え、物語文の読解で人物の心を読む思考力を鍛え、自分がアウトプットするときは、それらを総合して文章やプレゼンを組み立てることが、「構造を読み解く」ということなのです。

「クリティカル・シンキング」との共通点

構造の読み解きは「クリティカル・シンキング」にも通じるものがあります。クリティカル・シンキングは、文字どおり「批判的な思考」というよりも「ロジカル・シンキング(論理的思考)」を意味する思考方法です。ビジネスを行ううえで有効な思考方法として長らく取り上げられ、私も経営大学院や企業研修の授業を担当していました。

クリティカル・シンキングの本質は、「もれなくダブりなく論理的に検討することで他者に納得してもらい、ともに動いてもらうこと」にあると私は考えていますが、このもれのなさやダブりのなさは構造で担保されるのであり、ある意味、構造化そのものなのです。

その一方、クリティカル・シンキングはロジックツリーやフレームワークを使うことも多く、なかなか続かない、挫折してしまったという方も多いのではないでしょうか。「構造の読み解き」は、小学校の授業を舞台とする「構造学習」をベースとしていますので、無理なく、その感覚をつかみ、訓練することができると思います。

ちなみに、欧米のビジネススクールでクリティカル・シンキングを授業として取り入れる学校はあまりありません。なぜなのでしょう?

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私が「構造化」を「構造化」とは知らずに小学校で学んでいたように、海外の学校では大学入学以前にリーディングやライティングを含む“ランゲージ・アーツ”や、幼少期における“ショー・アンド・テル(Show and Tell)”において、文章やプレゼンテーションの構造を読み取り理解すること、自分で組み立てて書いたり述べたりすることを訓練しています。リーディングにおいて、“テキスト・ストラクチャー(Text Structure)”という言葉もたびたび登場します。

科目体系は国や地域によってかなり異なりますが、言語系統の教育科目において、いわゆる思考力を鍛えている例は多々あります。言語は思考なのです。

「構造読解力」は日頃の読解を意識することで身につけることができます。そして、その結果、こんなメリットが実感できるはずです。

● メールや文書の要点抽出の仕方がわかり、素早く理解できる
● 会議参加者や会話相手の発言意図を考える癖がつく
● わかりやすいメモや報告書が書ける
● ロジカルでストーリーのあるプレゼンが組み立てられる
● ミーティングや面接で聞かれたことに的確に答えられる
河村 有希絵 コンサルタント

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かわむら ゆきえ / Yukie Kawamura

慶應義塾女子高等学校、東京大学法学部卒業後、ボストン コンサルティング グループに入社。ノースウェスタン大学ケロッグスクールオブマネジメントにてMBA取得。長期にわたり、さまざまな企業のコンサルティングに携わる。

その後、コギト・エデュケーション・アンド・マネジメントを創業し、「構造学習」をベースにした言語教育を研究、展開しながら、グロービス経営大学院においてもクリティカルシンキング、マーケティング科目を担当。2021年、東京大学教育学部 教育実践・政策学コースに学士入学。2023年、卒業。

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