「衝撃の会員減」から1年、Netflixが見せた変化 複数提示された打開策には懐疑的な見方も

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値下げは一時的には利益率の低下につながるものの、会社側は「長期的な収益の最大化に役立つ」と強調する。

今回の決算におけるNetflixの説明で目立ったのが、この「長期的」というワードだ。巣ごもり特需が一服し、以前のような力強い会員数の伸びが見られない中、経営陣も長期的な成長シナリオを示す必要性を強く認識していることがうかがえる。

実際、広告付きプランや有料シェアリングはどちらも検討段階にとどまっていた1年前と比べると、会社が目指す成長の方向性は見えてきた。しかし業界関係者の間では、それらが持続的な収益拡大につながるか、懐疑的な見方も漂っている。

有料シェアは長期的に収益を毀損する?

ある動画配信事業者の幹部は、Netflixが始めた有料シェアリングについて「本来はアカウントのシェアを認めず、1人ひとりと契約を結ぶことが理想的。シェアを公に認めて割引価格での利用を促すことは、長期的には収益を毀損するのではないか」と疑問を呈する。

広告付きプランをめぐっても、会員数が当初期待したほど伸びていないと見る向きもある。広告主向けのプライベート・マーケットプレイスの導入について、ある広告業界関係者は「現状は広告付きプランの会員数が少なく、(広告の表示回数が限られて)十分な広告枠を確保できない状況が続いている。クローズドな広告取引にすることで広告主自体を絞り込もうとしているのでは」と指摘する。

そもそもNetflixが目下注力する施策は、いずれも動画配信のサブスクリプションモデルを主軸とする収益構造を大きく変えるものではない。多角化という意味で新たな取り組みとして期待されるゲーム事業も、現時点では会員のつなぎ留め以上の役割を果たせないでいる。

今回は、創業者であるリード・ヘイスティングス氏が1月にCEOを退いてから初の決算でもあった。4月25日にはサランドス共同CEOが韓国の尹大統領と会談し、韓国コンテンツに対して大規模な投資を行う意向を明らかにした。新経営陣の下でも攻めの姿勢を貫くNetflixだが、再成長への「明確な道筋」を示すハードルはまだ高そうだ。

髙岡 健太 東洋経済 記者

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たかおか けんた / Kenta Takaoka

宮崎県出身。九州大学経済学部卒。在学中にドイツ・ホーエンハイム大学に留学。エンタメ業界担当を経て、現在はM&Aや金融業界担当。MMTなどマクロ経済に関心。

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