「ピエール マルコリーニ」はなぜ買収されたのか ライバルのゴディバ展開する会社の傘下に
ゴディバ ジャパンの親会社は、MBKパートナーズ傘下のVM2で、日本、韓国、オーストラリアでゴディバを展開し、ゴディバのベルギー工場を保有。複数のプレミアムブランドを運営するグローバルなプレミアムフードカンパニーを目指している。
「VM2には、ゴディバで培ったプレミアムチョコレートの経験があります。もう1つ、新たなブランドを、と考えた時、ゴディバとは違うポジショニングでありながら、ゴディバと同じくベルギー王室御用達ブランドで、クオリティが高いショコラティエはマルコリーニしか見当たりませんでした。両ブランドともベルギーが拠点で、情報共有しやすいのもメリットです」とシュシャン氏は語る。
まったく異なる2つのブランド
確かに、ゴディバとピエール マルコリーニは、歴史もスタイルもまったく異なる。
チョコレートをよく見れば、一目瞭然だ。マルコリーニのチョコレートは、ベルギーにフランスをミックスしたようなスタイルで、小ぶりなものが多く、洗練されている。ゴディバはモダンに進化しながらも比較的大ぶりで食べごたえがあり、ベルギーチョコレートの伝統的な製法をしっかりと継承している。
ブランドの成り立ちも異なる。ピエール マルコリーニは、1995年にベルギー・ブリュッセルで創業、カカオ豆からチョコレートを一貫製造する。日本には2001年に初上陸し、国内に9店舗を構える(2023年4月現在)。
ゴディバの歴史は古く、1926年にベルギー・ブリュッセルで創業し、日本には1972年に上陸。高級チョコレートブランドとして圧倒的な知名度があり、日本全国に350店近い店舗を展開している。
実際に、「調査によると、ゴディバとマルコリーニを両方ともよく買っているというお客様は数パーセントしかいませんでした。お客様の層がまったく違うのです」(シュシャン氏)。
ピエール マルコリーニのファンは、「職人」としてのこだわりやセンスを評価している。今回の買収によって日本ファンの中には、「マルコリーニがゴディバ化してしまうのか」「コンビニで売られたり、大量生産され、低価格商品を出すのか」などど“方向転換”を懸念する人もいるかもしれない。
が、これに対してシュシャン氏は、「まったくありません」とあっさり否定。「ブランドをしっかり分け、それぞれのアイデンティティを保ちます。マルコリーニについては、ブランドのDNAや世界観を尊重し、ビーントゥバー(カカオ豆からチョコレートの一貫製造)の先駆者としての役割を守り、その素晴らしさをお届けしていきたい」。つまり、ブランドがミックスすることは一切ないという。
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