低迷のビットコイン、メルカリ後発参入の勝算 暗号資産「冬の時代」でも口座開設者数が10万人

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国内最多となる28銘柄の暗号資産を取り扱うビットバンクの廣末紀之社長は、「情報が分散的に管理されるWeb3の時代が到来すれば、個人同士が第三者を介さずにデジタルアイテムなどを取引するために暗号資産が必要となる。ただ現時点では国内で決済などの身近な使い道がないから、一般消費者に普及しにくい」と指摘する。

資金流出事件などで暗号資産のイメージが悪化していることもあり「現在は認知度拡大よりもセキュリティ面への投資に重点を置いている」(廣末社長)という。

競争環境も厳しい。国内では楽天グループやSBIホールディングスなど約30の交換業社が存在する中で、メルカリは後発参入となる。

ライバルからは「歓迎」と「懐疑」の声

SBIホールディングス傘下で暗号資産交換所を運営するSBI VCトレードは、口座内で日本円を自動的に暗号資産に変換する技術で、NFTを簡単に購入できるサービスを展開している。SBI VCトレードの近藤智彦常務取締役は「アートや音楽といったコンテンツ関連の企業に加えて、不動産の権利売買などでNFTに関心がある業界など、すでに100社超の企業から声がかかっている」と語る。

メルカリの参入に関して暗号資産交換業の幹部は「最大の課題は暗号資産の認知や保有者の拡大であるため参入は歓迎。本来、暗号資産に流れることのなかった資金(メルカリの売上金)が流入するメリットもある」とみる。

だが別の幹部は「(メルカリは)客単価を増やしたいのだろうが、モノを安く買いたいニーズを持ったユーザー層が暗号資産の取引を求めているのか。事業の継続性に疑問がある」と冷ややかだ。「2019年にLINEも暗号資産事業に参入したが、楽しいコミュニケーションを求める顧客のニーズと合致せず苦戦している」と指摘する。

金融事業参入に前のめりなメルカリ。2022年7月~2023年1月期の月間アクティブユーザー数の伸び率は前期比5.3%増となり、前年同期比13.5%増だった1年前と比べて鈍化している。思い描く暗号資産の普及を実現し、フリマアプリの成長性を再び示せるかが試されている。

伊藤 退助 東洋経済 記者

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いとう たいすけ / Taisuke Ito

日用品業界を担当し、ドラッグストアを真剣な面持ちで歩き回っている。大学時代にはドイツのケルン大学に留学、ドイツ関係のアルバイトも。趣味は水泳と音楽鑑賞。

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