低迷のビットコイン、メルカリ後発参入の勝算 暗号資産「冬の時代」でも口座開設者数が10万人

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メルカリはここ数年、フリマアプリをテコに金融事業を強化してきた。2019年にはスマホコード決済事業のメルペイ、2022年11月にはクレジットカード事業のメルカードを展開している。フリマアプリ内の自社決算手段の割合を増やしたり、ポイント還元施策で出品・購入を促進したりと相互に成長を促してきた。

メルコインの中村奎太CEO。2018年にメルカリに新卒入社後、ブロックチェーン(暗号資産のデータ管理などの技術)のエンジニアとして活動してきた(記者撮影)

暗号資産事業にも、フリマアプリの成長を後押しする役割がある。ビットコインに魅力を感じたユーザーがアプリ内で出品を増加させることや、取引や値動きの確認のためにアプリのログイン回数を向上させることを見込んでいる。さらに「ユーザーの受け入れ状況を見ながら、暗号資産で購入可能なNFTのサービス拡充なども検討していく」(中村氏)。

メルカリユーザーが暗号資産に慣れていけば、フリマアプリは不要品のみならず、デジタル上のNFTの売買までできるプラットフォームにまで成長できる可能性があると期待を寄せる。

「怪しい」イメージがこびりつく

とはいえ、国内の暗号資産に対する不信感はかなり強いのが現状だ。

暗号資産は銀行などの金融機関が一括管理する集約型ではなく、ブロックチェーンと呼ばれる技術を用いて、個々のユーザーが取引記録を分散管理する。インフレで現金の価値が目減りするとの思惑から、ビットコインなどの暗号資産を持つ人々が世界的に増えた。

だが日本暗号資産取引業協会(JVCEA)によると、国内での暗号資産の口座数は約640万と、証券口座数の2割以下。暗号資産の所有割合はアメリカが約13%に対して、日本は約4%にとどまる。取引への漠然とした不安や損失を被る懸念がネックとなっている。暗号資産は円やドルなどの法定通貨と比べて価格の変動が激しい上、ハッキングなどによる被害のイメージも根強いのが現状だ。

2022年11月には、アメリカの暗号資産交換業大手・FTXトレーディングが経営破綻。負のイメージは一段と高まっており、複数の関係者は「暗号資産は冬の時代を迎えている」と口をそろえる。

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