浜田宏一内閣参与「すぐの追加緩和は不要」 「ただし追加緩和があっても悪くはない」

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──政界や市場の一部からは次回4月30日の日銀金融政策決定会合で追加緩和すべきとの指摘もある。

「日銀の需給ギャップ(14年10─12月期でマイナス0.1%)の数字が正しいとすれば、あまり緩和はいらないが、内閣府の数字(同マイナス2.3%)が正しいとすれば、アベノミクスを始めた当時と同じくらいの過剰があることになる。そうであれば何かしなければいけないだろう。今緩和してもすぐにはインフレになるわけではなく、4月30日の追加緩和に特に強く反対することもない」

──現在、長期国債残高を80兆円増加させるペースで買い入れているが、さらなる増額は可能だと思うか。

「技術的に国債を買うのも怖くなってきているし、他の物を買うにしても市場の厚みの問題もある。日銀としては、技術的に達成するのが困難になる可能性はある。ますます異次元の緩和手法を使わざるをえなくなる」

──大規模緩和の強化は副作用への懸念も強まりやすい。

「これだけやっているので、マーケットにはある程度の副作用も当然及ぼしていると思う。ただ、債券市場に与える影響は2次的なものであり、一番重要なのはインフレになったら困るということだ。しかし、インフレになりそうもないのに、債券市場で誰が損をするとかというのは2次的な話であり、株で儲ける人もいるのだから、そこは目をつぶっていい」

──金融緩和の結果として円安が進行し、コスト上昇や実質所得への影響も懸念される。

「120円程度までは良いが、それ以上どんどん125円、130円となると購買力平価との差が非常にはっきりしてくる。為替はいろいろな要因で振れるので、購買力平価と等しくなくてはならないということはないが、あまり購買力平価から離れると投機筋が仕掛けてくる可能性がある」

──120円程度は許容範囲ということか。

「そういうことだ」

──追加緩和によって、一段と購買力平価からかい離する懸念はないか。

「変動相場制の論理では、国内の需給を重視すべきということ。円が安くなっても短期的には仕方ない」

──米為替報告書でも、日本の政策は金融政策への依存が高過ぎると指摘している。ドル高けん制の意味もあると思うか。

「通貨戦争という概念は、変動制の下においてはほとんどない、というのが私の一生かかってやってきた学問の答えであり、譲れない。米国の報告書が出たからといって、日本が自身の景気を改善するためにだけやっているならば、問題はない」

──17年4月からの消費税再増税には、賛成との立場か。

「どちらかといえば、そうだ。私自身は、これからは間接税である消費税を重んじる代わりに、法人税を大幅に安くした方がいいという考え。法人税は国際競争があり、引き下げないとやっていけなくなる。法人税を下げることで外国から投資が入り、日本の投資が出ていかないという意味で、税収をプラスにする大きな要因になり得る。一方、租税特別措置などは役人をめぐるコネの温床のようなものであり、止めるべきだ」

──消費税再増税の影響を見極めるまで、金融緩和は止められないとの声もある。

「その(消費増税)前に金融緩和をちゃんとやっておかなければならない。本当に出口を迎えていれば、消費増税には助け舟になるはずだ。一番心配なのは、消費税を上げることで、景気が落ち込むような局面が想定される場合。その前から金融緩和をかなり全開にし、消費税を上げられるような状況に持っていく必要がある」

──政府は今夏をメドに新たな財政健全化目標を作る。2020年度までのプライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字化とともに、債務残高対GDP比を重視すべきとの指摘もある。

「どちらを選ぶという問題ではないが、プライマリーバランスを縮小させ、なるべくならばネットの純負債を減らしていくべきだと思う。しかし、黒字化を何年までにやるというのは恣意的。プライマリーバランスが毎年減っていく改革方法は重要と思うが、いつまでに黒字化にすると言って、そのために国民所得が影響を受け、国民が飢えてもいいとは思わない」

 

(伊藤純夫 金子かおり 編集:田巻一彦)

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