本当にChatGPTはリサーチャーの仕事を奪うのか AI時代に人間が鍛えるべきリサーチのスキル
ジェネレーティブAIの活用により、一定の基礎調査や情報収集は文字通り瞬時にできるため、手間は確実に減っていくでしょう。しかし、得られる情報は公開情報(学習データ)の域を出ません。世の中にすでにある情報から関連性の高いものを提示してくれますが、世界が驚くような発見、誰もそんな角度から見たことはなかった、というような新ファクトは出てこないのです。
そのような新しいファクトは、既存のデータを集めて整理すれば出てくるというようなものではないので、必然的に仮説思考が求められます。経験からくる直感や判断力からの「おそらく重要なのは〇〇なのではないか」という仮説出しと、それを裏付けるファクトをどう集めるかという「作る」リサーチの事前設計こそが、人間に求められる役割になっていくはずです。
人間に求められる能力
そうであれば、リサーチャー(に限らずAIを活用するあらゆる人)が警戒すべきは、仕事を奪われることではなく、AIに頼りすぎることで人間側の仮説構築力や設計力が落ちること、なのではないでしょうか。
冒頭で挙げたような、コンサルティング会社での「これ調べておいて」といった依頼を受けたスタッフは、リサーチ作業を繰り返す中で、世の中にはどんな情報ソースがあるのか(業界知見・勘所)、どうすれば効率的に情報を集められるか(計画力・作業効率向上力)、どのくらいの時間をかけてよいのか(タイムマネジメント力)、どんなまとめ方をすれば伝わりやすいのか(アウトプット力・説得力)、といった試行錯誤の経験から基礎力を養っていました。そのような機会が減っていくとすれば、別の機会でこれらの基礎力を鍛える必要があるでしょう。
今後AIが我々の生活の中に浸透していくにつれ、AIと人間の力をうまく組み合わせる場面が増えていくことが想像できます。AIで手間を省いてクイックに基本情報を整理し、その情報を基に人間が仮説を出し、その仮説に対してさらに「探す」リサーチでAIに補足情報を確かめさせる。また、世の中にいまだ存在しないデータが必要であれば、それを得るための「作る」リサーチをかける……といったように、AIと人間がそれぞれ得意なことを活かして補完しあう中で、人間が得意なことを鍛え続けていく必要があります。
人間としては、引き続き特徴的な言葉・情報への嗅覚や執着心を養いつつ、仮説構築力や設計力を高めることで、あらゆる知的活動における主導権を失わず、AIをうまく使いこなしていくことが求められるでしょう。
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