自転車ヘルメット「着用義務化」でわかった危険度 未着用の事故致死率2.2倍、約6割が頭部損傷で死亡

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普段使いしやすいタイプのヘルメットを本格的に発売したのは4年前から。もちろんそれ以前からオージーケーカブトはヘルメット一筋だった。

「弊社の創立は1982年。当初は自転車用グリップなどを販売する会社でしたが徐々にヘルメットの製造に特化。人の命を守るための製品ですから、安全性能を確保するための厳しい試験を繰り返し行い、そのデータを製品作りに活かしています」

各種試験はヘルメットの安全規格である「SGマーク」などを取得する際にも必須。

「安全規格を満たしたヘルメットには『SGマーク』のシールが貼られています。このマークは、事故時に衝撃を吸収できるか、ヘルメットが脱げないか、上下左右の視野を確保できるかなど、さまざまな試験を行っている証しで、安心して購入できます」

ただし、正しく着用しなければ、せっかくの安全性も活かされない。

「弊社では、自治体のイベントなどに出向いて、ヘルメットの必要性や選び方、装着方法についてお話しする啓発活動も行っています。

特に気をつけていただきたいのはサイズ。合わない場合、本来の安全性が発揮されなくなりますから、できるだけ試着して選んでいただきたいですね」

リボンを使ったツバの跳ね上げ構造で、走行時のばたつきを抑え視認性を確保。広めのツバで日差しの気になるシーズンも安心(写真提供/株式会社オージーケーカブト)

ヘルメット着用が生死の境目に

そもそもヘルメット着用の機運はなぜ高まったのか?

「交通事故の発生件数自体は年々減少しています。ところが、すべての交通事故の中で自転車事故が占める割合は年々増え続けていて、その社会問題が今回の法改正につながったと考えられます」

ヘルメット着用の必要性を示すデータもある。

「警察庁のデータで、自転車事故時にヘルメットを着用していた人に比べて、未着用の人は致死率が約2.2倍、高くなることが示されました。

また、死亡者の損傷部位を調べたデータでは、約6割が頭部の損傷で亡くなっていることも判明。ヘルメットを着用すれば絶対に大丈夫というわけではありませんが、頭部を守ることで致死率を下げ、事故後も社会復帰できる可能性を高めることができます」

実際にヘルメットに命を救われた顧客からお礼のメールが届くこともあるそう。

「お子さんが信号のない横断歩道を自転車で通過中、速度オーバーで突っ込んできた車と接触。10m近くはね飛ばされたそうです。

しかし、ヘルメットを着用していたおかげで、全身打撲の大ケガを負ったものの、命に別条はなかったとのこと。ヘルメットには多数のひび割れが入っていたそうで、いかに衝撃が大きかったかがよくわかります」

もしヘルメットを着用していなかったら……。想像するだけでゾッとする。このようなケースを耳にすると、ヘルメットは必須に思えるが、実際の着用には課題もあるそう。

次ページ「降車後のヘルメットの取り扱いが面倒」という課題
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