ジム・ロジャーズ「日本人の給与が上がらない真相」 日本人が海外に出稼ぎに行くほうが早い

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オリンピックが国の経済を活性化するというのであれば、なぜその2年後に企業の破綻が相次いだのだろうか? むしろ開催国は、オリンピック以後、景気の後退や巨額の債務問題に頭を抱えることが多いものなのだ。

そもそも、オリンピックを開催すること自体に膨大な資金がかかる。そしてオリンピックは基本的に「一度かぎり」のイベントだ。たとえば、オリンピックスタジアム建設はすばらしいビジネスだが、建設が終われば新しい案件はない。産業全体の活性化にはつながらないのだ。

ましてや今の日本は、1000兆円を超える巨額の債務を抱えている。オリンピック開催によって日本の借金はさらに膨らむことになってしまった。こうした弊害で日本経済は不利益を被っただけである。

日本ではなぜ、競争力あるビジネスが育たないのか

それにもかかわらず日本は、2030年に札幌でオリンピックを開催しようとしている。今この国に必要なことは、オリンピックのような一時しのぎの取り組みを推進することでも、紙幣を大量に刷って円の価値を下げることでもない。競争力のあるビジネスを育てることだ。

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2025年の開催を控える大阪・関西万博も、東京オリンピックと同様に無駄遣いとバラマキに終わるだろう。万博で経済が上向いた国が存在するだろうか? 私には思い浮かばない。

かつて、1970年の大阪万博にはたくさんの人が訪れ、日本の科学技術や経済発展を世界に知らしめるうえでそれなりの役割を果たしたが、それは当時の日本に勢いがあったから可能だったことであり、万博を開いたから日本が豊かになったというわけではない。

どんな物事にも、長所と短所の両方が存在する。日本国内ではカジノ建設に反対する声も根強い。反対派の意見には、「ギャンブル依存症になる人の増加」「治安の悪化」「若い世代の健全な育成への悪影響」などがあるようだ。しかしこれらは、カジノ事業の短所にしか注目していない短絡的な発想に映る。

ジム・ロジャーズ 投資家、ロジャーズホールディングス会長

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Jim Rogers

1942年、米国アラバマ州生まれ。イェール大学で歴史学、オックスフォード大学で哲学を修めた後、ウォール街で働く。ジョージ・ソロスとクォンタム・ファンドを設立し、10年間で4200パーセントという驚異的なリターンを上げる。37歳で引退した後、コロンビア大学で金融論を指導する傍ら、テレビやラジオのコメンテーターとして活躍。2007年よりシンガポール在住。ウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロスと並び世界三大投資家と称される。 主な著書に『冒険投資家ジム・ロジャーズ 世界大発見』(日経ビジネス人文庫)、『危機の時代』(日経BP)、『ジム・ロジャーズ 大予測』(東洋経済新報社)『大転換の時代』(プレジデント社)がある。

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