ジム・ロジャーズ「日本人の給与が上がらない真相」 日本人が海外に出稼ぎに行くほうが早い
とはいえ覇権国の座にあったアメリカでさえ、過去10年の平均昇給率は2~3%で推移しているので、日本の現状はそれほど衝撃的なものではない。日本の平均賃金が韓国を下回ったという点には驚くが、これは韓国が中国と貿易を始めたことに起因しているかもしれない。
いずれにしても、これほどまでに賃金が伸び悩み円安も進むとなると、将来的には安い賃金と円安を武器に、日本人が海外へ出稼ぎに行くことも十分考えられる。
ただし、どの国に出稼ぎしてもいいということではない。慎重に検討を重ねるべきだ。たとえば、ベトナムや中国はいいと思う。また、ロシア、とくにウラジオストクは面白い場所だ。ただ、有事の際にウラジオストクの港は軍事上重要な拠点になるので、ビジネスを行ううえで危険をともなう可能性はある。
これから若い世代の日本人が国内で成功するには、ハードルがどんどん高くなるだろう。外に出ていくほうが早いかもしれない。
国が国民から資産を奪い、借金を返す
日本政府は、「個人が外に出ていく」方策ではなく、「外から来てもらう」方策で景気を上向かせようと、2020年の東京オリンピック・パラリンピック、2025年の大阪・関西万博、そして万博後のカジノ開発などを立て続けに計画した。
東京オリンピック・パラリンピックは、運悪く世界的なコロナ禍と重なってしまい、この国の経済に打撃を与える格好となった。しかし、それは「コロナ禍」によって有人での開催ができなくなったことに起因するものではない。
「オリンピック開催国の経済が潤う」というのはよく言われる話だが、その通りになった事例は過去に1つたりとも存在しない。
たいていの場合、このようなことをいうのは、政治家・観光業・接客業などのように、国民と観光客にお金を落としてもらいたい人たちだ。
日本は、1964年にもオリンピックの開催国(開催地は東京)になった。オリンピック開催によって、この国に高度経済成長期が到来したわけではないのだが、ちょうどこの時期、日本には高速道路が誕生し、新幹線も開通した。真新しいスタジアムも誕生し、街もきれいになった。これらの事業に携わった人々は、一定の恩恵を受けることができたし、政治家もこのようなポジティブな成果を誇らしげに口にする。
しかし1966年、日本の株式市場は大暴落し、銀行の破綻が相次いだ。「証券不況」と呼ばれる景気後退である。株価下落のあおりを受けた当時の大手証券会社、山一證券で発生した取り付け騒ぎ(預金者が金融機関・金融制度などに対して不信感を抱き、預金や掛け金を取り返すべく、金融機関の店頭へ押しかけること)は経営危機に追い打ちをかけた。
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