地元以外は知らない「東武の宇都宮駅」意外な一面 駅自体は小振りだが巨大な「東武初の百貨店」

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2022年10月、東武宇都宮線がいつになくにぎわった。いちご一会とちぎ国体の総合開会式当日、航空自衛隊のブルーインパルスが「カンセキスタジアムとちぎ」の上空を展示飛行。会場最寄りの西川田駅に見物を終えた人々が押し寄せた。が、もともと電車は運行本数が少ない。東武宇都宮駅の熊倉与一駅長は「西川田駅で入場規制をしたのは初めてではないか。宇都宮など近隣からの利用が多かった」と振り返る。

東武宇都宮駅の熊倉与一駅長
東武宇都宮駅に停まる20400型電車と熊倉与一駅長(記者撮影)

栃木市出身の熊倉駅長は「東武線の中でも県庁の最寄り駅となっているのは、何を隠そう東武宇都宮駅だけです」と指摘する。確かに栃木県庁舎は大通りを渡った先にあり、歩いていくことができる。東京、埼玉、千葉、栃木、群馬にかけて広い路線網を持つ東武鉄道のなかで、県庁(都庁)まで電車を降りて徒歩で……という好立地なのは同駅しかない。

利用客は高校生のほか、官公庁に勤務する人の姿も目立つ。「百貨店の従業員や、10時の開店に合わせていらっしゃるお客さまもいます」(熊倉駅長)。

「西の東武」の将来は?

県庁に近い大通り周辺は金融機関などの支店の店舗が軒を並べるオフィス街となっている。駅前には元気寿司の1号店という東武店。東へ延びるアーケード商店街のオリオン通りもにぎわう。南には松が峰教会や宇都宮市役所、戊辰戦争の舞台でもある宇都宮城跡がある。

さらに東武の駅前から路線バスで西に向かうと大谷エリア。採石場跡の大谷資料館や大谷景観公園、坂東三十三観音の札所の1つ大谷観音で知られる大谷寺、高さが約27mある平和観音を有する観光地だ。

2023年7月には東武の新型特急「スペーシアX」が日光線にデビューする。その翌月にJR宇都宮駅東口のLRTが開業する。将来の西側延伸ルートも本格的に動き出しそうだ。東武宇都宮駅付近を経由し、県教育会館付近までの約5kmを2030年代前半の開業を目指して整備する計画で、さらに大谷観光地付近への延伸も検討する。まずはLRTの開業で何かと注目が集まりそうな宇都宮。「西の東武」あたりまで足を伸ばせば、地元の人しか知らない街の意外な一面が見つかるかもしれない。

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橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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