地元以外は知らない「東武の宇都宮駅」意外な一面 駅自体は小振りだが巨大な「東武初の百貨店」
宇都宮店の開業は1959年11月28日。東武東上線のターミナルにある池袋店より2年半早いのは、意外に感じるかもしれない。
1998年発行の『東武鉄道百年史』によると、1950年代半ば、宇都宮市内に大規模な商業施設の建設計画が相次ぐ中で「『東武宇都宮駅にも百貨店を擁した駅ビルを建設してほしい』という声が市民の間に高まり、市議会でもたびたびその話題が取り上げられるようになった。そして、当社に対しても公式に出店要請があった」。同社としても「流通業に進出するのならこの時期をおいてない、と考えていたときでもあったので、早速その要請を受けることにした」という。
そこでバスターミナルと一体化した駅舎に百貨店を併設した5階建てのビルを建設。1~4階が売り場で5階には大食堂とホール、屋上に遊園地を設置した。同百年史は「当社にとって、百貨店事業は初めてである。その成否は、池袋に開業するつもりの百貨店にも影響する」として、採用した従業員を松坂屋銀座店で研修させ、「準備万端を整えて開店に臨んだ」と振り返っている。
「ツインタワー」にホテルがあった
1971年には50レーンのボウリング場と500台収容の駐車場の「パーキングビル」がオープン。1973年に5階屋内の「メキシ館」、6階屋上の「アメリ館」からなるレジャー施設「東武ランド」も誕生した。「仮面ライダーなどのショーや、シーズンごとにバラエティにとんだイベントを提供し、チビッコたちの人気であった」(『東武宇都宮百貨店30年の記録』)という。
東武ランドと同時に「新館」のツインタワーの9~12階に東武ホテルが開業した。こちらも東武グループのビジネスホテルのなかで歴史が古い部類に入る。その1年2カ月ほど前に東武ホテル第1号である「高輪東武ホテル」(現・品川東武ホテル)が品川駅西口に開業したばかりだった。
最上階13階はスカイレストラン。「北関東一番の高いレストランで、ホテル、レストランのお客様のため、宇都宮初のクリスタルエレベーターを設置した。特に眺望は素晴らしく、市内の夜景が一望できる新名所となった」(同)。
いまは1991年にオープンした「宇都宮東武ホテルグランデ」が大通りの北側で営業をしていて、新館のホテルがあった階は事務所になっている。ボウリング場やレジャー施設は時代の流れのなかで姿を消していった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら