陳建一氏「料理の鉄人」出演2度断ろうとしたワケ 一流料理人たちをも悩ませていたコンセプト

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四川飯店グループ会長などを務めた「中華の鉄人」陳建一氏がお茶の間に与えた影響は(写真:時事)

中華の鉄人、陳建一氏が3月11日に67歳で亡くなった。四川飯店グループの会長で日本中国料理協会会長。テレビでも活躍し著書も多い。数ある業績の中で、生活史研究家の立場から特筆すべき1つとして、1990年代の伝説的テレビ番組、『料理の鉄人』で鉄人を務めたことを挙げたい。

同番組は、日本料理、中国料理などの枠を超えて、各ジャンルの鉄人が挑戦者を受けて戦う、異種格闘技をイメージして作られた料理バラエティ。手に汗を握る実況中継をした対決は、男性を中心に当時の若者に大ウケした。海外へも遠征して注目され、アメリカのテレビ界のアカデミー賞と言われるエミー賞にノミネート。アメリカで『アイアンシェフ』というタイトルの同種の番組が作られるなど、世界各国へも影響を与えた。

グルメブームの波に乗った

その後、2012年と2019年にも、フジテレビは同様のシリーズを放送したが、どちらもあまりウケなかった。1990年代に大成功できたのは、企画の斬新さに加え、グルメブームの波も大きかったと思われる。

グルメブームは、ヌーベル・キュイジーヌを持ち込んだフランス料理店が次々に誕生し、1970年代の終わり頃から食べ歩きをする人たちが増えて始まった。1983年にグルメ漫画の『美味しんぼ』の連載が『ビッグコミックスピリッツ』で始まって若者たちの関心が高まり、バブル景気という追い風が到来。

レストランのマナーでまごつく人が珍しくなく、「食を語ることははしたない」とする大人がたくさんいた時代だったからこそ、一流料理人たちが次々に腕前を披露する番組は、新鮮な驚きを視聴者にもたらした。バルサミコ酢がスーパーに並ぶようになったのも、同番組で使われ流行したからである。

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