事実を確かめず情報発信する人が危なすぎる理屈 情報の「選択」「消化」「整理」「発信」が重要

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情報の消化
(出所:『メディアを賢く消費する「情報リテラシー」 情報洪水時代の歩き方』)

消化するためには、まずはこの情報が事実なのか調べるというプロセスが非常に大切になる。このプロセスには知識や実際に見た情報も大きな助けとなる。しかしコロナを事例にとれば、事実を冷静に見ることがなかなか厳しいのだという現実にも直面する。

講演などをしていると、「自分も実はコロナ鬱になった経験がある」という人が高校生から社会人まで一定数いた。やはり新型コロナウイルスという未知で、治療法も確立されていないのに流行しているウイルスと日々向き合うと、真面目な人ほど悩んでいるのだと感じた。

不安や批判の「発信」ほど冷静に

コロナ禍初期、筆者も体調が悪くなるとコロナなんじゃないかとまず心配になった。筆者の年齢になると本当に亡くなってしまうケースもあるし、コロナにかかってしまうかもという不安に日々向き合っていると、根拠のない考えにとらわれてしまう。

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ある朝、ゴミを家の前に出そうとしていて、一瞬だからいいやとマスクをせずに玄関を開けたら、ちょうどごみ収集作業のお兄さんがいて、目が合った。見るとその作業員さんがマスクをしてない。「やばい、ノーマスク×ノーマスクではコロナになったかも」と思い、すぐに入念にうがいをした。

しかし咳もしていない、一瞬の会話もしていない5秒で感染をするのか。そもそも作業員が感染しているのかもわからない。不安となる根拠がどれだけあるのかは自信がない。この状況がまさに、断片情報による想像が医学的な見地よりも勝っている状況だ。社会的な不安があると、いかに断片的な情報でも増幅をしてしまい、冷静になれなくなることがわかった。

もしこの時に「コロナになったかも」とか、自分を棚に上げて「作業員からうつるかも」などと発信をしていたら、批判を受けた可能性がある。不安になることをつぶやく時こそ、きちんと消化していないと炎上につながるということだ。不安や批判ほど冷静になり、「発信」する必要がある。

大野 伸 日本テレビ放送網「news every.」前統括プロデューサー

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おおの しん / Shin Ono

早稲田大学パブリックサービス研究所研究員、早稲田塾講師、日本メディア学会会員、sweet heart project(障がい者自立支援プロジェクト)アドバイザー。1996年に日本テレビ放送網入社。報道局に配属になる。2008年から経済部デスク兼ニュース解説者として「news every.」「スッキリ」「NEWS ZERO」などでスタジオ解説、ラジオ日本の朝の番組「岩瀬惠子のスマートNEWS」での解説など。2013年に営業局へ異動。2016年より報道局にて「Oha!4 NEWS LIVE」プロデューサー、2018年12月から2022年5月まで「news every.」統括プロデューサーを務める。早稲田大学大学院政治経済学術院公共経営研究科修了(公共経営修士)。

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