都内に住んでいる知人の浜野明子さん(仮名、58歳)からこんなメールをもらったのは昨年10月のことだった。無料の婚活サイトで知り合った西山淳平さん(仮名、62歳)との事実婚を始めているらしい。
ベテランの看護師である明子さんの実家は東北にある。淳平さんはそこにも毎月泊まりに来て在宅ワークをする予定だという。フットワークの軽い2人である。都内のマンションに招いてもらったので、明子さんの手料理をいただきながら話を伺うことにした。
生涯独身を想定していたけれど
駅前で待ち合わせて、明子さんが17年前に「生涯独身」を想定して購入したというマンションに向かった。広告関連の仕事をしている淳平さんは都心の事務所にいて、後から合流するらしい。2DKの部屋のダイニングは東欧風に統一されていて、明子さんの趣味の良さが感じられる。
「他の部屋は見せられません。淳平さんが私の倍以上の荷物を持ち込んで、すごいことになっているからです。私がいない間、掃除をちゃんとしているかをチェックして、バトルをしています!」
言いたいことが次から次へと出てくる明子さん。それでいて相手の話もしっかりと聞く。好奇心とコミュニケーション欲の塊のような女性である。自分の姓への強い愛着もあり、恋人はいても結婚には至らない最大の理由になっていたようだ。
「だからこそ、相手にも名字を変わってほしいとは言いたくありません。淳平さんは『僕が浜野になるよ』と言ってくれていますが、彼のお母さんはご存命です。長男の名字が変わることは嫌かもしれません」
自分のやりたいことは追求したいけれど、そのせいで他人を悲しませたくはない。明子さんは両方の想いに挟まれながら独身生活を謳歌してきたのだ。
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