メガネのJINSは、なぜ戦略を転換するのか 「PC眼鏡」や「低価格帯」依存から路線変更

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一時はPC眼鏡ブームに乗ったが…(写真は2014年5月の商品発表会で説明する田中仁社長、撮影:尾形文繁)

一つは商品改革。従来は「売れるモノにリピート発注をかけていたため、同じようなものが増えて、売り場の見た目がつまらなくなっていた」(同社)ことから客足が鈍化。その結果、似たような商品が売れ残り、セール品が増えるという悪循環に陥っていた。

そこで、今回は定番品を増やすと同時に、全商品の4割程度になるスポット商品については、季節などに応じて順次見直しをかけるようにし、売り場の鮮度を保てるようにする。

4900円が中心だったラインナップも、7900円や9900円といった、高額商品の比率を増やす。すでに、今季に入ってから高価格品の構成比を増やすと同時に、セール品販売の比率を減らしていることで、客単価は上昇傾向にあるという。

 客単価の上昇や販管費の抑制などが進み、2015年度第2四半期(2014年9月~2015年2月)の業績見通しを上方修正。売上高はほぼ従来計画通りながら、営業利益は計画比を2.9億円上回る、8.9億円となる見通しだ(前年同期比では8%減)。

もう一つは人材強化。従来は店舗におけるパートタイム販売員の比率も多く、検眼や眼鏡の加工ができる人材が限られていた。このため、週末などの混雑時は検眼等の待ち時間が長くなっており、「チャンスロスも発生していた」(同社)。

ワンプライス商法や機能性眼鏡の限界

こうした中、2014年9月には雇用期間が限られていた、「準社員」302人を正社員として採用。同時に準社員の雇用も新たに増やしており、パートタイム販売員の比率を徐々に下げていく考えだ。また店舗に立つ社員の教育も強化。より知識豊富な店員を増やすことによって、顧客のニーズにきめ細かに対応できるようにする方針である。

ジェイアイエヌではこうした一連の改革で、4月以降は徐々に客単価だけでなく、客足も回復、今期下期以降は既存店売上高が上向くことを想定。2015年8月期の売上高は前期比11%増の404億円、営業利益は同14%増の34億円に改善すると見込んでいる。

ただし、テコ入れ効果がどこまで出るかは未知数だ。ジェイアイエヌが火を付けた低価格のワンプライス商法は、すでに手あかがつき、近年は多くの眼鏡メーカーがPC用や花粉遮断眼鏡など、機能性眼鏡の開発に力を入れてきた。しかし、これもブームが一巡し、最近では各社が「原点回帰」を掲げて、より顧客のニーズによりそった接客、高付加価値品の強化などに乗り出している。

振り返ると、他社とは一線を画する商品の開発や売り方で、知名度を上げてきたのがジェイアイエヌ。定番品の充実という堅実路線によって、"らしさ"を失うおそれもある。果たして第2の創業は吉と出るか。

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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