現代自動車が独自に高炉建設を表明。提携関係にあるJFEスチールの対応に注目

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韓国・現代自動車が傘下の電炉大手INIスチールの持つ製鉄所隣接地(忠清南道・唐津)に独自の一貫製鉄所を建設すると表明し、波紋を広げている。自動車メーカーが高炉を持つという常識を超えた構想に対し、国内では「現実味が乏しい」(国内高炉首脳)と首を傾げる向きが大勢。だが、現代自は2010年に年産700万トンの粗鋼を生産し、対外供給も行う、と大まじめだ。
 実際に5年後に稼働するとしたら、同社と自動車用鋼板の生産供給で提携しているJFEスチールとの関係に大きな影響を与えるのは必至だ。というのもJFEスチールが現代自の高炉生産を積極的に支援するという見方よりも、JFEスチールの自動車用鋼板の供給数量が減らされる恐れを指摘する声のほうが鉄鋼業界や資本市場関係者の間で大きいからだ。危機感を抱いた韓国唯一の高炉メーカー・ポスコが供給を増やし、JFEがその割を食って数量面で契約が不利になるとの観測も出ている。
 JFEは旧川崎製鉄が2000年11月に現代自グループの自動車用鋼板製造メーカー(下工程のみ)に出資(14%強)を決め、日本から冷延コイルなどを大量・安定供給してきた。このおかげでJFEスチールは、輸出比率が新日鉄よりも約15%高い44%に達するというグローバル化を推進できたとも言える。
 この件に関し、JFEスチールは「一切ノーコメント」(首脳)のため、現段階では業界関係者の見方が正しいかどうかの確認はできない。が、JFEにとって今後の対韓ビジネスの対応が難しくなるのは確かだ。
【古庄英一記者】


(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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