植田次期日銀総裁候補・参院での所信発言要旨 情勢に応じ工夫し、金融緩和継続することが適切

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日本銀行の黒田東彦総裁の後任候補に指名された経済学者の植田和男元審議委員は27日、今後の金融政策運営について、「情勢に応じて工夫を凝らしながら金融緩和を継続することが適切である」との見解を示した。参院議院運営委員会での所信聴取と質疑で述べた。

植田氏は、現在のイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)のメリットは良好な金融緩和を持続できること、デメリットは市場機能に影響があるかもしれない点とした上で、現在は「メリットが副作用を上回っている」と指摘した。現状はYCCの一部運用見直しによる「市場機能へのプラスの影響が出るかどうか見守っている状況」と説明した。

所信聴取と質疑に応じる植田和男氏Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

日銀は債券市場の機能の低下を踏まえて、昨年12月にYCCにおける長期金利の許容変動幅を従来の上下0.25%から0.5%に拡大した。1月には共通担保資金供給オペも拡充したが、イールドカーブのゆがみは解消していない。

金融政策を引き締め方向へ見直すには「基調的な物価の判断が大きく改善することが必要」と述べた。足元の消費者物価の上昇率は4%程度だが、基調的な動きは日銀が物価安定目標として掲げる2%とは「間がある」としている。

24日の衆院での質疑でYCC修正のタイミングとして挙げた、基調的な物価見通しの「もう一段の改善」の具体的な状況を問われ、「2%の持続的・安定的なインフレ率の達成が見通せる時期、あるいはその周辺」と説明した。基調的な物価が上昇しない場合は、副作用を踏まえて持続性の高い仕組みを考えると述べた。

物価情勢の現状や先行きの見通しを踏まえれば、現在の日銀の金融政策は「適切である」と指摘。「金融緩和を継続し、経済をしっかりと支えることで、企業が賃上げをできるような経済環境を整える必要がある」と語った。

消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)は1月に前年比4.2%上昇と41年4カ月ぶりの高水準となった。黒田総裁は25日、インドでの主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議後の記者会見で、輸入物価上昇が主因であり、2023年度半ばにかけて2%を下回る水準まで低下すると改めて指摘した。

コアCPIの前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまでマネタリーベースを拡大するとしている「オーバーシュート型コミットメント」については、「当面続けるべきだ」としながらも、「インフレ率が目標を大幅に上回るリスクがないか注意が必要だ」と語った。

アベノミクス

第2次安倍政権が進めた異次元金融緩和などのアベノミクスについては、13年1月に合意した政府・日銀の共同声明にも明記されている2%目標を続ける意味で「踏襲する」と述べた。両者が必要な政策を実行した結果、デフレではない状況が作りだされ、企業収益が拡大して、ベースアップも実現したと評価し、共同声明の「考え方は適切であり、直ちに見直しの必要はない」と語った。

具体的には、「できるだけ早期」に実現を目指すとした物価目標の達成時期を引き継ぐと言明。2%の水準自体も「どこかで大幅に変更することは考えていない」としている。

植田氏は、金融資本市場は金融政策の波及経路の起点だとして、市場とのコミュニケーションは重要と指摘。一方、各会合の間に入ってくる新しい情報に基づき経済・物価情勢の見通しを変え、政策も変更することがあり、「時々サプライズ的な要素が入ることはやむを得ない」と述べた。その際は日銀としての考え方を丁寧に説明することが重要との認識を示した。

政策点検に関しては、「就任後に必要があればやっていきたい」と述べた。その上で、長期化している金融緩和のさまざまな側面を総合的に点検することになるとし、「時間をかけて、ゆっくりとした点検を行う姿が考えられる」と語った。

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--取材協力:、.

(発言の詳細を追加して更新しました)

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著者:伊藤純夫、占部絵美

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