慶大、常識覆す「英語試験で出題文が日本語」の衝撃 受験関係者の間でさまざまな臆測が飛び交う事態に

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例えば「How hard it is!」は、「なんてハードなんだ!」と訳しますね。「どれだけ大変か」という疑問を投げかけるような形態を取ることで、「すごく大変だった」ということを示しているわけです。

日本語でも普通に「どれだけ大変だったか」と言ったら、「A:あんまり大変じゃなかった B:結構大変だった、どっちだと思う?」という質問を投げかけるわけではないですよね。「こんなに大変だったんだよ!」と言っているわけです。

英語を学習する前に、日本語でこうした表現を理解していれば、英語で同じような表現が出てきても、すんなりと入ってくることでしょう。

しかし、もし日本語力がなくてこの表現を知らないと、英語でこの表現を見かけたときに「へえ、こういう表現方法が英語ではあるんだな」と暗記するだけになってしまい、英語の似たような表現や他の言語を勉強するときに、知識がつながっていかないのです。

訳せるだけではない「本質的な理解」が問われる

今回出題された日本語の本文には、「地理的に限定されている」「再検討する必要性ばかりを強調している」「尊重」「論拠」「抜本的」といった難しい表現や言葉が含まれていました。英語の勉強の前に、これらの日本語をしっかりと身につけていないと、英語で文章を読んでも理解できないわけです。

例えば「抜本的」は「drastic」と表現します。でも、drastic=抜本的とわかっていても、「抜本的とはどういう意味か」が日本語で理解できないと、訳せても意味がわからないのです。そして従来の英語の問題では、この部分をあまり問うことができない場合がありました。drastic=抜本的と訳せていれば、答えられてしまう問題も多かったのです。

慶應義塾大学の問題では、訳せるだけではない、「本質的な理解」を聞いてきたのだと言えます。

こうした問題は、きっと増えていくと思います。慶應義塾大学以外にも、いろんな大学で出題されるようになるかもしれません。そして、英語の勉強の前に日本語をしっかり理解していないと解けない問題が増えて、いろんな受験生が苦労することになるとも思います。

今や英語は小学生から義務教育で習い、それに合わせて親御さんの間では「早期教育がいい」「英語をとにかく早い段階から習わせるのがいい」という風潮になっている部分があると思います。その流れに、この問題は一石を投じるものだったといえるかもしれません。

西岡 壱誠 現役東大生・ドラゴン桜2編集担当

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にしおか いっせい / Issei Nishioka

1996年生まれ。偏差値35から東大を目指すも、現役・一浪と、2年連続で不合格。崖っぷちの状況で開発した「独学術」で偏差値70、東大模試で全国4位になり、東大合格を果たす。

そのノウハウを全国の学生や学校の教師たちに伝えるため、2020年に株式会社カルペ・ディエムを設立。全国の高校で高校生に思考法・勉強法を教えているほか、教師には指導法のコンサルティングを行っている。また、YouTubeチャンネル「スマホ学園」を運営、約1万人の登録者に勉強の楽しさを伝えている。

著書『東大読書』『東大作文』『東大思考』『東大独学』(いずれも東洋経済新報社)はシリーズ累計40万部のベストセラーになった。

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