鉄道業界が怯える消耗部品の調達難、JR西に続く運行本数削減はあるか【震災関連速報】
近畿日本鉄道(近鉄)は日立化成への依存度が高く、このままでは6月以降の一部運用への影響が懸念されている状況だ。東武鉄道も全車両の約6割の1242両が電動機ブラシを使う車両であり、現状は日立化成が唯一のサプライヤーとなっている。会社は「再来月(5月)ぐらいまでは大丈夫」と説明するが、依存度の高さから考えて日立化成の生産中断が長引けばその影響は決して小さくはなさそうだ。
意外なところでは東京メトロも日立化成の依存度が高い。モーターを使う動力車1380車両中、3割強の446車両が電動機ブラシを使う。日立化成が45%を占めるサプライヤーとなっている。京浜急行も全車両の3分の1に電動機ブラシが使われ、日立化成が主力サプライヤーとなっている。
電動機ブラシを使う車両は多いものの、メインサプライヤーが日立化成ではないことで難を逃れそうなのが京成電鉄や東京急行電鉄だ。
日立化成の電動機ブラシを使う鉄道会社は、その生産停止が長期化するという最悪のシナリオも考えて、「日立化成以外の部品メーカーに増産や調達数量拡大の打診や要請をする動きも水面下で出ている」と関係者は打ち明ける。
ただでさえ運転本数の削減に追いこまれている関東系の鉄道各社にとっては、さらなる減便・運転本数の間引きはなんとしても避けたいというのが本音だろう。とはいえ、東海カーボンや帝国カーボン工業(未上場、工場は大分)など日立化成工業のほかに複数ある電動機ブラシメーカー各社もおいそれとは増産や供給拡大要請を受けられない。
短期間で業界シェア5割を占める日立化成工業の穴を完全に埋めるのはまずもって至難の業である。本格的に穴を埋めるのであれば増産投資が必要になるが、日立化成の生産停止が未来永劫となる保証もなく、一時的になる可能性があるかぎりは増産投資という経営判断には踏み切れないだろう。
電動機ブラシはどちらかといえば過去の古い型の車両に搭載され、鉄道各社が古い型の車両からの切り替え・導入を進めるVVVFインバータ制御装置を載せた省エネ・電力の新型車両には使われない。つまり「直流電動機モーター」は縮小市場であり、これも部品メーカーにとって増産投資に二の足を踏ませる要因になる。
福島原発の事故処理が長引き、日立化成の生産停止が想定以上に長期化すれば、JR西以外の各社が期待する日立化成以外のサプライヤーからの調達拡大では十分な手当てが出来ず、JR西に続く一部減便(運転本数の削減)に踏み切らざるを得ない鉄道会社が出る可能性はある。
震災・原発による直接の被害、経済活動の停滞とイベント自粛・観光地・行楽地への出控え、東電の計画停電に伴う運転本数の減便など事業環境が厳しさを増している最中の、思わぬ震災二次被害。鉄道業界に部品欠品問題という新たな頭痛の種が浮上している。
(大西 富士男=東洋経済オンライン)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら