関東地方にあるターミナル駅に来ている。駅前のデパート内にある小籠包の店でランチ時に待ち合わせたのは岩橋千鶴さん(仮名、40歳)。
席に着いてからメールをチェックすると、<大変恐れ入りますが、電車に乗り遅れまして……5分ほど遅れます。申し訳ございません。>という律義なメッセージが入っていた。ただし、到着してからの千鶴さんはしつこく恐縮したりはしない。もう一度ちゃんと頭を下げてからすぐに笑顔になって早口に話し始めた。チェック柄のセーターはゴルフ用で、今日もレッスン帰りらしい。
毎日が「ゴルフか旅行」
「毎日がゴルフか旅行です。家事も代行してもらってもいいのですが、あまりに暇だから自分たちでやっています。夫は洗濯とゴミ出し、私は掃除と料理ですね。コロナ前までは月1で海外に行っていました。こんなことを言うと失礼だから他の人には言いませんけど、仕事も子育てもしてない私は本当に暇でさー」
100万円以上するという指輪を光らせながらもどこか素朴な雰囲気を漂わせる千鶴さん。ときどきラフな言葉が混じるところも興味深い。北関東の「田舎」で長女として育ち、特に高校生時代は暗かった、と千鶴さんは振り返る。
「公立の進学校に入ったら、成績が悪すぎてショックを受けたんです。私、思うほど頭が良くなかったのだと。教育熱心な母の期待に応えられないのが苦しくて、自殺未遂をしてしまったこともあります」
そんな千鶴さんは英語圏への留学に活路を見出す。カリフォルニア州の大学に入り、「むちゃ楽しい」学生生活を送った。以来、30代半ばで賢一さん(仮名、41歳)と出会うまでは高給取りのエリート外国人としか付き合ってこなかったという。
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