私は、商社の人事で採用担当をしていたとき、1日に何度も、何十人、何百人という学生の前で会社紹介のプレゼンテーションをしていました。学生側も、1日に何社もの話を聞いているので、お互いに疲れてきます。
そんななか、学生が前のめりになって話を聞く時間と、眠そうに話を聞く時間があります。その様子を観察していると、それは3つの点の違いによるものだと気付きました。
1つめは、話し手の主語が「会社」か「自分」かの違いです。
「弊社は――」と、会社を主語にして話すと学生は興味を示しません。「また同じような綺麗事を聞かされる」と感じるのでしょう。一方、主語を「私は――」と一人称にして自分の経験や感じたことを話すと、学生を引き付けることができます。
2つめは、話し手自身が話している内容を頭の中で“見て”いるかどうか。
前述のオバマ氏の演説でも、物語の情景を頭の中で思い描き、実際に今体験しているように感情を乗せて話していたはずです。
話し手に見えていない景色を、聞いている人が見ることはできません。過去の経験や実現したい未来をクリアに見ながら話すことで、そこに感情が乗り、聞き手にも伝わります。
3つめが最も重要です。ストーリーの内容そのものが、人々の共感を生み出すものであるかどうかです。
「共感を生む」条件3つとは?
共感を生む条件としては、以下の3点です。
ストーリーとは、人生の変化とその理由を描いたものです。まずは人生の目標を述べ、次にその願望を遮る力との戦いを描きます。その願望が、単なる金儲けではなく、社会的課題を解決するものであることが重要です。
バラ色の未来や、サクセスストーリーだけを聞いても、疑念を感じて人の心は動きません。自分の失敗や直面した問題を前面に出して、それをいかに乗り越えたのかを見せる。その感情の変化によって、共感を生むことができます。
聞き手に対して、愛と感謝を込めて話し掛けることが大切です。
目の前の聞き手の苦労や悲しみを想像しながら、「この人たちに少しでもポジティブな影響を与えよう」という思いを込めて話します。
また、目の前で自分の話を聞いてくれている人、伝える場を設定してくれた人、伝えたい内容への気付きを与えてくれた人、多くの支えがあって今の自分がいることへの感謝を意識しましょう。
周囲の人たちを巻き込んでいくためには、メンバーに共感されるだけではなく、リーダーがメンバーに共感することも必要です。
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